HV車との燃費競争は難しいが……

今回の改良でマツダが改めて表明したのは、カタログ上の燃費性能の表示について、日本国内専用の「JC08モード」表記を止め、全て国際的な「WLTC」で表すとし、それをこの先、全ての車種に適用するという方針だ。

日本におけるWLTCの全面的な導入は2018年秋の予定で、現在はJC08モードとの併記が可能となっている。しかしマツダは、一足先にWLTCに統一すると決断したのだ。それによって、実用燃費により近い表示になるという。

マツダがWLTCを導入することについては以前、CX-3のガソリン車追加の折、マイナビニュースの記事で紹介した。今回、あえてマツダがWLTCのみに統一するとした背景には、燃費に対するマツダの真摯な姿勢が表れている。

  • マツダ「CX-3」

    「CX-3」にガソリンエンジン車を追加した時に「WLTC」への表記統一を打ち出したマツダ

マツダがWLTCに統一する別の理由を想像することもできる。同社のラインアップを見ると、「アクセラ」の一部車種以外にはハイブリッド車(HV)などリッター30km以上を達成できる超燃費車がないし、今後の電動車導入計画も、国内にはいつ、どのような形でという明確な表明がない。そうした状況であるゆえに、JC08モードという他社と同じ土俵の上で、HVと燃費で競うのを避けたのではないだろうか。ただ、いずれ秋になれば、どのメーカーもWLTCを使ってくるのだが。

カタログ表記と実用燃費との乖離という問題はともかくも、HVは容易にリッター20kmほどの実用燃費を出すことができる。これに対し、SKYACTIVのガソリンエンジンは、WLTCでもその性能には追いつかない。一方のディーゼルは、カタログ数値上でHVに肩を並べ、また燃料代においても、レギュラーガソリンに比べ軽油は1リッターあたり20円ほど安く経済的だ。

とはいえ、今回の試乗でも感じたことだが、市街地などで日々利用するのであれば、ガソリン車の方が圧倒的に快適だ。

  • ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」
  • ガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 2.0」
  • ディーゼルエンジンの「SKYACTIV-D 1.8」(左)とガソリンエンジンの「SKYACTIV-G 2.0」(画像提供:マツダ)

このところのマツダは、CX-5、CX-3、「アテンザ」と大幅な商品改良を相次いで実施している。その商品戦略について猿渡健一郎商品本部長は、「昨年『サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言2030』を発表し、人に寄り添うクルマ開発をしているが、次世代車を一気に切り替えるのは難しく、次世代商品の考え方や技術を現行商品に前倒しで入れていきながら併売していくことになる」と話していた。

いずれにしても、今後実用化が予定されている「SKYACTIV-X」という新燃焼方式のガソリンエンジンと併行して、電動車の早い導入を消費者は待っているはずだ。また、静粛で快適な乗り心地と安心できる操縦安定性というマツダ車の魅力に、電動車はより適合するのではないかと思う。