19時台の京王新宿駅は、帰宅ラッシュ時間帯とあってたいへん混雑している。発車する特急や準特急は、到着して乗車側の扉が開くやいなや、すぐに席が埋まる。発車時には乗車率も100%を超え、吊り革をつかめない人もいようかという状態だ。もし座席を確保したければ、列車を1本落として待たねばならない。

当然ながら大きな荷物を抱えている人、小さな子供を連れた人や、高齢者などは、こうした満員電車を待ち、乗り込んで帰宅するには辛い。ただ「残業で疲れた……」というだけのビジネスパーソンであっても、座れずに人混みに揉まれるのは厳しいだろう。

危惧や批判は杞憂

明大前を通過する橋本行き。橋本行きは京王永山まで、京王八王子行きは府中まで途中駅には停まらない

京王ライナーに対しても、全区間乗っても30分前後なのに、400円の追加料金を払って乗る利用客がいるのか。ガラガラに違いないなどという机上論が、運転開始前にはささやかれた。新宿~京王八王子間の運賃は360円(ICカード利用)、新宿~橋本間420円(同)の普通運賃に対して、総額では倍前後になる座席指定制列車への危惧だ。

しかし、それはラッシュ時間帯の利用客の心理を知らない論だと思う。「400円払ってでも、並ばず、座って帰りたい」という需要は、10両編成1本あたり438席という座席定員を埋めるには十分だった。首都圏では、一般の列車も含めた通勤需要自体が極めて大きいため、座席指定制列車への需要はその一部にすぎなくても、絶対数が多くなるのは当然だろう。

毎日は難しいが、時には座席指定制列車への投資もいいだろうという欲求は、誰の中にも生まれるはずである。「楽して帰りたい」と思う通勤客の気持ちは、極めて強い。その需要動向をつかみ、新車を投入してでも新しいタイプの列車の設定する鉄道会社の見通しは的確であった。