メルセデス・ベンツのSUV「Gクラス」が新型になる。現行型と新型で共通する部品は数点とのことで、中身は大きく変わっているとおぼしきGクラスだが、見た感じは依然として、あの独特な箱型のSUVであり続けている。このクルマ、変わらない所にも価値があるようだ。

  • メルセデス・ベンツの新型「Gクラス」

    メルセデス・ベンツの新型「Gクラス」。「G」は「ゲレンデヴァーゲン」の頭文字だ

ワニと「Gクラス」が経てきた適者生存の歴史

1979年に誕生したGクラスは、これまでに一度もフルモデルチェンジを受けたことのない特殊な存在だ。国境警備などに使用されていたクルマを乗用車に改造したのが始まりで、そのスクエアなデザインとオフロード性能の高さという個性を一貫して堅持し続けてきた。今回の新型についても、メルセデス・ベンツでは「フルモデルチェンジを施した」とは表現していない。

世界で累計30万台以上が売れているGクラスだが、日本にもファンが多いとメルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長は話す。確かに、滅多にデコボコ道を走る機会のない東京でも割と見かけるし、コアなファンが多そうなクルマだ。

  • メルセデス・ベンツの新型「Gクラス」

    ブームを背景に街で見かける機会の増えたSUVだが、「Gクラス」は他のクルマと見間違えようがない

基本の部分は変わらないが、Gクラスは時代の要求や技術の進化に合わせて絶えず改良を繰り返してきたそうだ。このクルマの商品企画責任者を務めるダイムラーのミヒャエル・ベルンハルト氏は、「新型Gクラスは、個性的なデザインや比類ないオフロード性能など、祖先の強力な遺伝子を受け継いでいる」とした上で、ダーウィンの進化論を引きつつ、Gクラスの経てきた適者生存の歴史を“ワニ”になぞらえて説明した。

「ダーウィンは『種の成功は強い遺伝子だけでなく、周囲の環境に適応あるいは順応する能力にも依存する』と言ったが、その代表例は“ワニ”だ。ワニは何百万年もの間、周囲の環境に適応しつつ、基本のデザインをほぼ変えずに生き続けてきた。Gクラスも同じだ」

  • ダイムラーのベルンハルト氏とメルセデス・ベンツ日本の上野社長

    新型「Gクラス」発表会に登壇したダイムラーのベルンハルト氏(左)とメルセデス・ベンツ日本の上野社長

中身は大幅に刷新

ワニと同じでデザインは大きく変えていない新型Gクラスだが、現行型と比べれば、走行性能や快適性などが格段に進化していると上野氏とベルンハルト氏は口をそろえる。

例えば、悪路走破性を自慢とするGクラスにとって屋台骨ともいえる「ラダーフレーム」は新設計となっているし、サスペンションも新たに開発した。現行型では「少し重い」(ベルンハルト氏)というステアリングも、従来の「ボール&ナット形式」から「電動機械式ラック&ピニオン式」に変わったことで「より精密で、反応も良くなった」(同氏)そうだ。