クレジットカードを利用する際に心配なことのひとつが、不正利用ではないでしょうか。内閣府の調査によると、クレジットカードの利用に消極的と考える人は、その理由として「クレジットカードの紛失・盗難により,第三者に使用されるおそれがある」(41.3%)、「個人情報などがクレジットカード会社や利用した店舗などから漏えいし, 不正利用されてしまう懸念がある」(35.4%)を挙げています※。

※出典:「クレジットカード取引の安心・安全に関する世論調査」の概要(平成28年9月)

では、クレジットカードにかかわるトラブルには、具体的にどんなものがあるのでしょうか。その対処法と合わせて確認しておきましょう。

クレジットカードのトラブルにはなにがある?

日本クレジット協会の調査によると、クレジットカードの不正利用による被害額は2013年の78.6億円から、2016年には142億円にまで増加しました。中でも最も多いのは、盗まれたカードの情報を不正に利用しカードの名義人本人になりすます手口で、被害額の7割以上を占めています。また、偽造カードによる被害も2割ほどを占めています※。

これらの不正利用被害は、家電製品・宝飾品など高額な商品、デジタルコンテンツやチケット類など換金性・流通性の高い商品を販売しているお店での決済で多発しているそうです。

不正利用される手口には、お買い物のスタイルによって特徴があるようです。お店のレジでクレジットカードを提示して決済する対面型の取引では、偽造カードや紛失・盗難に遭ったカードが悪用されるケースが多いのに対して、ネットショッピングのようにお店と直接対面せずに決済する非対面型の取引では、カード情報が抜き取られる、または情報漏えいなどで流出し、第三者がカードの名義人本人になりすます手口が多い傾向にあります。 クレジットカード自体が盗まれるのは、電車、新幹線、バスの車内や駅で寝ているとき、席を外したとき、飲食店のいすやハンガーに財布の入った上着やカバンをかけているとき、駐車場に止めた車内に財布を置きっぱなしにしたときなどに起こりがちです。

一方で、クレジットカードの情報が抜き取られるのは「スキミング」といって、悪用目的の読み取り端末にカードを通してしまうことで盗まれます。ATMや券売機などに偽造された読み取り端末が設置され、そこにカードを通したとき、ゴルフ場、スポーツクラブ、エステやマッサージ店などで、財布やカードから目を離した隙にカードを抜き取られてスキミングされる事例が多いです。ここで盗まれたカード情報が第三者に悪用されてしまうことがあります。

さらに、一斉に大勢のカード情報を盗み取る手口としては、カード会社などを装った第三者が、カード番号と暗証番号・パスワード等を入力させる偽のメールを送り、カードの会員がそれに応じてしまう、お店やサービスを提供する企業のデータベースをマルウェアなどで攻撃し、その企業が保有している顧客のカード情報を盗み取るなどがあります。

出典:日本クレジット協会 安全・安心なクレジットカード取引への取組み 関連資料より

不正利用かもしれないと思った時に確認すべきこと

自分のカードが不正利用されていることに気づく最も有効な手段は、カードの利用明細をチェックすることです。カード会社から毎月送られてくる利用明細に、身に覚えのない請求がないかどうかを必ず確認しましょう。請求元の店舗、金額、日付を見れば、自分の買い物かどうかをおおよそ判断できるはずです。

ただ、利用明細には「何を」買ったかは明記されません。またインターネット通販、インターネットサービスの利用料などでは、お店の名前とカードへ料金を請求する会社の名前が違い、利用明細に知らない社名が記載されることもあります。よくわからないときは、利用明細に記載されている社名をネット検索して、その企業の関連サービスを使ったかどうかを確認すると、心当たりがあるかもしれません。一部の店舗では、明細上に店舗の電話番号が記載されることもありますので、そちらに問い合わせてもよいでしょう。

自分で調べてもよくわからないときは、カード会社に問い合わせてみましょう。「何を買ったか」までの詳細はカード会社でもわからないことがほとんどですが、何らかの手掛かりがあるかもしれません。

不正が分かったらどんな対処をすればいい?

自分のカードが不正利用されていると強く疑われたら、すぐにカード会社に連絡しましょう。その場でカードの利用を停止して、それ以上悪用されないようにしてもらえます。また、不正利用かどうかをカード会社が調査して、不正が確定した場合にはそのカードを無効にしてくれます。調査の段階では、利用時の詳細などを伝えるために書類の提出を求められることもあります。

不正利用が判明した際、所定の要件にあてはまると、不正に請求された金額をカード会社が戻してくれます。これを「会員保障制度」といいます。多くのカード会社では、不正利用された旨をカード会社に伝えると、その60日前から通知日までの損害額を補償し、請求された代金を支払わなくてよいように手配します。

ただし、一部の例外もあります。詳細はカードを契約したときに交付される会員規約に記載されていますが、おもに以下が挙げられます。

・カードを他人に貸していたとき
・カードの名義人本人やその家族などによる買い物だったとき
・カード会社の不正利用調査に協力しなかったとき
・カード会社に申告した内容に虚偽があったとき
・決済の際に正しい暗証番号が使用されたとき
・カードの名義人の操作ミスや通信障害によるとき……など。

不正利用されないようにするための対策

不正利用の手口は年々巧妙になっており、カード会社やカード決済に対応する加盟店でもセキュリティ対策を強化しています。一方で、私たち消費者側でも、被害を防ぐためにできることはいくつかあります。

たとえば、以下が挙げられます。

(1)ICカードを持つ

ICチップ内蔵型のカードは一般的に、磁気ストライプ型よりもセキュリティ面では強いといわれています。もし磁気ストライプ式のカードを使っているなら、ICカードに切り替える方が安心でしょう。大手の国際ブランドのクレジットカードでは、現在は新規発行されるカードのほとんどはICカードになっています。

(2)暗証番号での決済にする

決済の際にはできるだけ暗証番号を使うようにしましょう。サイン式の決済よりも、暗証番号を入力して決済する方が安全性は高いとされています。ただし、暗証番号の使いまわしはかえって危険です。銀行のキャッシュカードやスマートフォンのロック画面などとは異なる暗証番号に設定しましょう。もちろん、自分や家族の誕生日、車のナンバーなど、簡単に類推できる番号も避けましょう。

(3)利用明細をこまめにチェックする

繰り返しになりますが、利用明細をチェックすることが、不正利用を早期発見し、被害を最小限に抑えるうえで有効です。紙ベースの利用明細が発行されるのは一般的に月に1回のみですが、ウェブベースならほぼリアルタイムに情報が更新されます。少しでも心当たりのない明細が含まれていたら、すぐに対処できます。

また、お店などでカード決済をしたときには、レシートとは別にカード決済の控えも発行されます。これを手元に保管しておけば、自分がカードを使った履歴は自分で確認できます。控えと違う金額が請求されている、控えにはない決済が明細に含まれているなどのときに、「おかしいな」と気づけるかもしれません。

キャッシュレス決済やネットショッピングの普及によって、カードを使う機会はこれからより広がるとも考えられます。リスクや対策方法をよく理解して、上手に使いこなしたいものですね。

※写真と本文は関係ありません

加藤梨里
ファイナンシャルプランナー(CFP(R)認定者)、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員
保険会社、信託銀行を経て、ファイナンシャルプランナー会社にてマネーのご相談、セミナー講師などを経験。2014年に独立し「マネーステップオフィス」を設立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。大学では健康増進について研究活動を行っており、認知症予防、介護予防の観点からのライフプランの考え方、健康管理を兼ねた家計管理、健康経営に関わるコンサルティングも行う。