新素材を東レと開発、新たな内装色は日本建築から
驚いたのはインテリアだ。2014年に続いて2度目の刷新を敢行したからである。ひとつの車種が6年間で2回もインテリアに手を入れるというのはあまり記憶にない。
実は、これも次世代の先取りだった。エクステリアと同じ水平基調であり、インパネからドアトリム、リアへのつながりを強調するために、全面的に変更したとのことだ。エアコンスイッチも横長に仕立て直すというこだわりも見てとれる。
ビジョン・クーペのインテリアを思い出してみると、たしかに水平基調で、インパネからドアトリムへのつながりを考えた、一体感のある造形だった。その領域へつなげていこうという意思が伝わってきた。
玉谷氏はこのインテリアについて、「生け花」を例に出して説明した。花や葉そのものではなく、空間全体を作っていくという発想で考えていったという。
素材については東レの「ウルトラスエード・ヌー」を投入。光沢感がありつつ、スエードの感触も持ち合わせた不思議な素材だ。服飾の分野では数年前から使われているそうだが、自動車用となると耐久性や難燃性などの対策が必要であり、東レとの共同開発で採用にこぎつけた。
カラーも注目だ。近年のマツダ車でおなじみのホワイトに加え、ブラウンを起用したからだ。しかもそれは赤みのある茶色ではなく、古い日本建築の木材をイメージした色味となっている。フラッグシップにふさわしい色という観点での起用だそうだ。
既存メカニズムで次世代の乗り心地を
エンジニアリングについても、新型アテンザは次世代のビークルアーキテクチャーを一部、先取りしている。
マツダは昨年、次世代技術の体験会をテストコースで開催した。その模様もこのサイトで報告しているが、このとき「SKYACTIV-X」と呼ばれる次世代エンジン技術とともに感心したのが、滑らかなハンドリングと乗り心地だった。
新型アテンザでは既存のメカニズムを用いつつ、この領域を目指した。マツダではこれを「エフォートレスドライビング」と呼ぶ。苦労しない、努力を要しないという意味の言葉を用い、意のままのハンドリングと人に優しい乗り心地を表現した。
シートのデザインも改めているが、これも次世代技術を先取りしている。従来より落ち着きのある見た目になっているだけでなく、薄くタイトだった形状を厚みのある包み込み重視のフォルムに換え、座りたくなるデザインを追求したそうだ。
これ以外にエンジンもガソリン、ディーゼルともに手を加えてある。次世代への切り替えが明らかになると、現行型を放置状態にするブランドもある中、マツダはマイナーチェンジとは一線を画す商品改良で、アテンザを更に魅力的な存在とした。このひたむきさが、ブランド高評価の源泉なのだろう。