近畿日本鉄道は15日、フリーゲージトレインの実用化に向けて開発を推進すると発表した。京都駅から吉野方面を検討対象路線とし、6月22日付の役員異動に合わせ、同社総合研究所にフリーゲージトレイン開発推進担当役員を就任させる予定だという。
同社は歴史的経緯から軌間の異なる路線を抱えており、大阪地区では大阪線・奈良線・京都線・橿原線などが標準軌(軌間1,435mm)、南大阪線・吉野線などが狭軌(軌間1,067mm)となっている。今回、フリーゲージトレインの検討対象路線とされた区間において、京都線・橿原線京都~橿原神宮前間は標準軌、吉野線橿原神宮前~吉野間は狭軌のため、現在の運行形態では橿原神宮前駅で乗換えが必要となる。
吉野線は沿線に飛鳥・吉野山などの観光地があり、近鉄も大阪阿部野橋~吉野間で観光特急「青の交響曲(シンフォニー)」を運行するなど、吉野エリアを重要な観光拠点ととらえている。一方、東海道新幹線の接続駅である京都駅からの特急ネットワークに関して、吉野方面へは橿原神宮前駅で乗換えを必要とすることから、軌間の統一や三線軌条なども含め、以前からさまざまな解決方法を模索してきたという。
フリーゲージトレイン(軌間可変電車)は異なる軌間でも直通運転できるように、車輪の左右間隔を軌間に合わせて自動的に変換可能とした電車。国内では九州新幹線西九州ルートなどで導入に向けた検討が行われてきた。
近鉄はフリーゲージトレイン実用化の効果として、京都駅から吉野方面も含め、同社の特急ネットワーク全路線で直通運転が可能となることで「お客さま利便の向上、ひいては当社のネットワークの価値向上につながります」「首都圏とつながる新幹線と、大阪・京都・奈良・名古屋・伊勢志摩・吉野などの各観光拠点が直通運転でつながることで、大きな荷物を持つインバウンドのお客さまをはじめ、快適かつ便利に鉄道の旅をお楽しみいただくことができるようになります」と説明。今後については「国土交通省とも相談させていただきながら、他の鉄道事業者や鉄道車両メーカーなどとともに、フリーゲージトレインの実用化に向けた検討を進めていきたい」としている。