この春、進学を機に子どもがスマホデビューした人もいるのでは? 子どもがスマホを持っていると、いつでも連絡が取れ、GPSで子どもの居場所も特定できるなど"安心"を得られるメリットがある一方、ネット依存やSNSトラブルなども懸念される。子どもとスマホの現状について、携帯ジャーナリストの石川温氏に話を聞いた。

  • 子どもにスマホを与えるのは、いつが適切?

小学生の3割近くがスマホを所有・利用

子どもがスマホを持ち始める時期については、学校が変わるタイミング、具体的には中学校や高校に入学するときが多いという。「ただ、数年前からスマホデビューの年齢は下がっている印象があります」と石川氏。

内閣府の調査「青少年のスマートフォン・携帯電話の所有・利用状況」によると、小学生のスマホの利用率は右肩上がり。平成29年度にはスマホ(※格安スマホや子ども向けスマホなども含む)の利用は小学生29.9%、中学生58.1%、高校生95.9%となっている。

小学生の場合、高学年になって塾に通い始めたり、夏休みなど長期休暇にひとりで留守番をするようになったりして持ち始める人もいるようだ。最近は、格安スマホの登場で金銭的なハードルも下がっており、親子ともに格安スマホを使っている家庭もある。

スマホ利用に100%安全はないと心得る

スマホデビューの低年齢化に伴い、懸念されるのがインターネットにまつわるトラブルだ。「ネットでは悪意のある人もやさしい言葉で近寄ってくることがあり、子ども自身が見知らぬ人とつながることに好奇心を抱くこともあります。しかし、ネットは架空の空間ではなく、実社会と変わりません」と石川氏は強調する。

実社会では知らない人といきなり話すことはないのに、なぜかネットだとガードがゆるんでしまう人は大人にもいる。「ネットは匿名だから何でもできるとか、悪口も言いたい放題と勘違いしがちですが、ネットでも本人は特定できるし、誰が何を書いたかのログは全部取られています」。そういう基本的なことはあらかじめ子どもにもしっかり説明しておきたい。

残念ながらスマホでの利用に「100%安全はない」と石川氏はいう。たしかに大人でもスマホを使っていてヒヤリとすることはある。たとえば、SNSのメッセージ経由で怪しいURLをクリックしてしまった……なんて経験がある人もいるのではないだろうか。

「ネットは道路と同じ。100%安全な道がないのと同じで、誰かが急に飛び出してきたり、自転車とぶつかりそうになったりすることはある。大怪我だけはしないように、赤信号で停まるとか、危険な車には近づかないとか、基本ルールは慣れるまでは付きっきりで教えてあげてほしい」と石川氏は力を込める。

スマホやネットはこれからの子どもの必須スキルに

子どもにスマホを持たせることは安心以外のメリットも多い。勉強に役立つアプリやコンテンツが充実しているのもそのひとつ。「すでにスマホやタブレットを学習ツールとして使っている学校もあり、スマホやタブレット操作に慣れることは今後の子どもには必須になっていくはず」と石川氏。

有害な情報に触れさせないためのフィルタリング設定などをしておくことは大前提だが、ネットを正しく使いこなす能力もまた、これからの子どもたちには求められるものだ。「いまや情報は記憶しておく必要がなく、知りたいことは検索すればよい時代。検索結果の中でどの情報が正しいのか、どの情報とどの情報を結びつけると最適な答えが得られるのか。情報の取捨選択の嗅覚が求められるようになっていくのだと思います」と石川氏。スマホの利用もそれを培う一助になるだろう。

子どもに正しくスマホを利用させるには、親自身のリテラシーを高める必要もある。子どもにスマホを持たせることをきっかけに、親自身も改めてスマホの使い方を見直しておきたい。

※画像はイメージ

石川温さん

月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜午後10時からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。近著に「仕事の能率を上げる 最強最速のスマホ&パソコン活用術」(朝日新聞出版)がある。ニコニコチャンネルにてメルマガツイッターも配信。