3月31日、フジテレビの看板枠"土8"を22年間背負ってきたバラエティ番組『めちゃ×2イケてるッ!』の5時間にもおよぶ最終回スペシャルで、ナインティナインの岡村隆史は涙ながらに「めちゃイケは、僕の青春でした!」と叫んだ。

それから1カ月後、4月27日深夜に同局で放送された単発バラエティ番組のタイトルは『青春アオハルTV』。青春真っただ中の人や、大人になっても何かに熱中して輝いている"青春(アオハル)な人"を応援していくという内容だが、この番組は、フジテレビ自身が失いつつある"青春"の気持ちを、奮い立たせるようにも見えた。

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    『青春アオハルTV』に出演する(左から)オードリーの春日俊彰、井森美幸、ヒロミ、ビビる大木=フジテレビ提供

番組構成は、ロケにスタジオコーナーと、まさにバラエティの王道で、そこに"生活に役立つ情報"は一切なし。まずは、ペットボトルのキャップを投げる京都大学のサークルに、オードリーの春日俊彰が潜入し、そのキャップ投げのすご技が成功すると、"アオハル応援隊"(バンドじゃないもん!)たちが『笑う犬の冒険』のコント・はっぱ隊から生まれた歓喜のソング「YATTA!」を歌い踊るという謎展開が繰り広げられた。

この盛り上げに、当の京大生は「何これ?」と苦笑いし、スタジオのMC・ヒロミも「くだらねえな(笑)」とつぶやいていたが、その後も何かにつけて春日の「やった!」の合図で"アオハル応援隊"が出現。すると、最初はあ然としていた京大生たちも、一緒に踊り始めるようになっていた。青春は、勢いなのだ。

続いて登場したのは、まだまだ青春真っ只中の高齢者集団。その正体は、つるピカ頭で人々を笑顔にする活動をしている「光頭会」で、頭皮に吸盤を付けて対決する鉄板ゲーム「吸盤綱引き」に、最適役のトレンディエンジェル・斎藤司が参戦した。また、開発された新ゲーム「ハゲの上には何だろな?」も披露。つるピカ頭の上に置かれたものを頭の感触だけで当てるというもので、人生の大先輩がスライムを頭に乗せられてベトベトになる姿は、衝撃映像そのものだった。

このロケでも、やはり歌とダンスが登場。斎藤が"ハゲ6"を率いて、V6の「WAになって踊ろう」をもじった「WAになって光ろう」を歌い、その曲をバックに、「光頭会」の出し物で笑顔になる人たちが次々に映し出された。青春は、温かいのだ。

そして、最後のコーナーは、青春をかけた一芸をスタジオで披露していく「アオハルさんカーニバル」。「ヨーヨーで洗濯物10枚取り込む」「全裸テーブルクロス引き」「オナラで吹き矢を飛ばして風船を割る」「声だけで銀座線渋谷~表参道を完全再現」といったネタが成功する中、「画面を見ずにスーパーマリオブラザーズの1-1をクリア」と宣言しながら、開始3秒でクリボーに接触・撃沈する事態が発生し、スタジオは爆笑に包まれた。青春は、何が起こるか分からないのだ。

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この番組の演出は、『人生のパイセンTV』を手がけたフジの"マイアミ啓太"こと萩原啓太ディレクター(マイアミD)。放送前に自身のTwitterで、「『笑っていいとも!』『とんねるずのみなさんのおかげでした』 僕を育ててくれたフジテレビの遺伝子を引き継いだ番組を作りました」と予告していたが、その通り、ロケ企画では『みなさん』を思い起こす"一般人いじり"、スタジオコーナーでは『いいとも』をほうふつとさせる"ハプニング"が満載だった。

MCのヒロミは、まさにフジテレビで青春を謳歌してきたど真ん中の世代だけあって、オープニングトークで「やっぱりフジテレビが忘れてるのは青春だと思うんだよね。『とんねるず』にしても『めちゃイケ』にしても、みんな『僕らの青春でした』って言うでしょ? 『青春だった』ってことは、青春が終わったってことでしょ? 終わらせちゃダメなんだよ! 死ぬまで青春なんだよ!」と力説。

『みなさん』でディレクターを担当していたマイアミDは、最終回でとんねるずが歌に込めた「バラエティを、滅ぼすなよ」というメッセージを真正面に受け止めて、『青春アオハルTV』を作ったに違いない。番組の最後には「青春は終わらせちゃダメだ!」の文字を大きく映し出し、強い決意をにじませている。