自動車業界では電動化が進んでおり、プラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)といったクルマが次々に登場しているが、商用車のトラックも電動化していくのだろうか。ダイムラーやテスラといった海外勢は積極姿勢と聞くが、日本の状況は。日野自動車で聞いた。

環境面だけではないトラック電動化の利点

日野自動車は本日(2018年4月26日)、2017年度の決算会見を開いた。北京モーターショーの会期中で、クルマの電動化について多くのメディアが報じている最中だったことも影響したのか、質疑応答では日野自動車の電動化に関する取り組みについて質問があった。

「再三、日野はEVに積極的ではないといわれ(報道され)、若干、思いが伝わっていないかなと思う」。電動化に関する質問に対し、このように切り出した日野自動車の下義生社長は、「EVは必要な技術。例えば都市内への乗り入れ規制とか、深夜とか、環境だけではなく『音』など、商用車にとっていろいろ利点がある」(以下、発言は下社長)との考えを示した。モーターで走るEVは走行音が静かであるため、騒音の面からも商用車を電動化するのは悪くないとの発言だ。

  • 日野自動車の下義生社長

    2017年度の決算会見に登壇した日野自動車の下義生社長

クルマの電動化は環境面からの観点で語られることが多いが、その部分については「『Well-to-Wheel』(ウェル・トゥー・ホイール、燃料採掘から車両走行まで)で考えて、最善かどうかの評価をしっかりとやる必要がある」とした。「Well-to-Wheel」とは、クルマが走行時に排出するCO2だけでなく、クルマの燃料が作られる過程で発生するCO2も含め、全体でいかに削減していくかが重要という考え方だ。

商品化の課題とは何か

環境面のメリットについてはしっかりと見極めていく必要があるが、EV技術は重要との考えを示した下社長。では、日野は電動トラックをいつ、発売するのか。

この点について下社長は、「言い過ぎかもしれないが、いつでも出せる」としつつも、「マーケット、お客様にしっかり評価してもらえるEVを出す」のであれば、「商用車にはコストの問題が付いて回る」ので、すぐには難しいとの考えを示した。

これはつまり、技術的に問題ない電気トラックならば「2020年過ぎに」出すことは可能だが、「ある領域のお客様に、100%EVにしよう」といってもらえるような電動トラック、つまり、コスト的に一般化が可能なレベルのクルマを出すのでれば、すぐにはハードルが高いとの見方だ。

日野はトヨタ自動車、マツダ、デンソーが共同で立ち上げたEV技術開発会社「EV C.A Spirit」に参加しており、つい最近の話としては、フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門であるVWトラック&バスとの提携について検討を開始している。VWとの提携では電動化が主な協業分野の1つとなりそうだ。これらの動きで電動トラックのコスト低減を図れるかが今後の鍵を握る。