最近では「働き方改革」が盛んに議論されている日本。長時間労働が美徳だった時代は過去のものとなり、働くときは働き、遊ぶときは遊ぶといったメリハリのある生活を送るべきという流れになりつつある。そんなタイミングで、ヴァカンスを目いっぱい楽しむ国民性でも知られるフランスから、アクティブにヴァカンスを楽しむためのSUV「ルノー・カジャー」が日本にも導入された。

  • CセグメントSUV「ルノー・カジャー」が日本デビュー

コンセプトは「人生に、アクティブヴァカンスを」

2017年夏、100台限定にて「カジャーBOSE」がリリースされていたが、今回発売された同車両はカタログモデルとしての導入となる。トレイルランナーの上田瑠偉さんがアンバサダーに就任するなどアクティブなイメージの強いカジャーだが、果たして日本でも受け入れられるだろうか?

カジャーはCセグメントに属するSUVで、サイズ的に言えば「日産・エクストレイル」にも近いサイズとなるが、それもそのはず、両車とも同一のプラットホームを使用しているのだ。と言ってもモジュール化されたプラットホームであるため、昔のように外板パネルの変更だけで別車種に仕立てたようなものではなく、根本から別車種に仕上がっていると言っていいものになっている。

  • 車体寸法は、全長4,455×全幅1,835×全高1,610mm。ホイールベースは2,645mm

今回、カタログモデルとなったカジャーは「インテンス」のみのモノグレード展開。先行導入されていた「BOSE」との違いは、BOSE製オーディオとパノラミックルーフが省かれた代わりにシートヒーター付きのフルレザーシートを搭載したことが大きな変更点となる。また、ボディカラーもブランナクレ(ホワイト)のみだったBOSEに対して、インテンスはルージュフラム(レッド)、ブルーコスモス(ブルー)、グリチタニアム(グレー)の3色が追加され全4色展開となった。

  • ブランナクレ(ホワイト)

  • ルージュフラム(レッド)

  • ブルーコスモス(ブルー)

  • グリチタニアム(グレー)

そんなカジャーのルックスは、ひと目でルノー車と分かるCシェイプLEDデイタイムランプなどを持ち、大きなホイールアーチをカバーするボディプロテクターなど、SUVらしいたくましいシルエットが特徴。その一方で、張り出したフェンダーなどルノー・スポールに代表されるスポーティなイメージも同居しており、状況を問わずアクティブに走り回れそうな雰囲気を纏っている。

  • “開放的な移動空間”もアクティブなヴァカンスに適するポイントとなる

インテリアに目を向けると、ブラックとシルバーで統一された室内と、レザーをふんだんに使用した内装(シート、ステアリング、シフトノブ)が上質な雰囲気を作り出している。メーターはフルカラーTFTパネルを用いており、表示する内容の変更や5つのカラーをセレクトできるといった遊び心も持ち合わせていた。

  • R-Link2は、ドライバーごとに写真や名前、オーディオ、エアコン、言語、メーターパネルの色などをカスタマイズ可能。最大6人まで設定できる

インパネ中央に位置する7インチモニターは、ルノーのマルチメディアシステムであるR-Link2。例によって市販ナビゲーションへの置き換えは不可能となっているが、Android AutoやApple CarPlayを介してミラーリングができるのは嬉しいところだ。

  • スピードメーター、タコメーター、オーディオ、ADAS(運転支援システム)が表示できるフルカラーTFTメーターパネルは、表示カラーをレッド・ブルー・ブラウン・グリーン・パープルの5色に変更できる

ヴァカンスに供するため軽視することができないラゲッジスペースは、通常時で527L。6:4分割可倒式リアシートは、ラゲッジ両サイドにあるハンドルを引くことで簡単に倒すことができ、フルフラット状態で1,478Lもの広大なスペースが生まれる。また、前後2分割されたラゲッジボードが標準装備され、このボードを使用することでラゲッジスペースの様々なアレンジも可能に。この辺りは、日産とのアライアンスが作用しているのかもしれない。

  • ラゲッジ側からワンタッチ操作でリアシートを倒せば、フルフラットスペースが広がる

軽快な乗り味を支える充実の機能

日本車の同クラスに比べるとやや物足りなさを感じる輸入車の先進安全装備だが、カジャーには衝突被害軽減ブレーキや車線逸脱警報、後側方車両検知警報、オートハイ/ロービームといった運転支援システムが標準搭載されている。また、車庫入れや駐車をサポートしてくれるイージーパーキングアシストも備わり、安全装備に関してはようやく日本車並みになってきたと言えるだろう。

  • エマージェンシーブレーキサポートイメージ

カジャーのパワートレインは、最高出力96kW(131PS)/5,500rpm、最大トルク205N・m(20.9kgm)/2,000rpmを発生する直列4気筒DOHC1.2リッターターボエンジンに、7速のデュアルクラッチトランスミッションである7EDCを組み合わせた前輪駆動となる。1.2リッターと聞くとパワー不足を心配するかもしれないが、よくしつけられた7EDCとのコンビネーションにより日常的な使用で不満が出ることはない仕上がりとなっている。ただし、多人数乗車や登りが続くシーンではやや物足りなさを感じるシーンもあった。

  • ボディ下部全周をカバーするボディプロテクターもSUVであることを際立たせる

駆動方式は、SUVらしいルックスを持ちながらも前輪駆動のみのラインナップとなる。しかし、最低地上高200mm、アプローチアングル18°、デパーチャーアングル28°と、SUVらしいフォルムによって、よほど雪深い地域や悪路を走行しない限りは必要十分な実力を持っていそうだ。ちなみに本国には4WDの設定もあるものの、ディーゼルエンジンとの組み合わせのみとなるため日本導入は難しいとのこと。もし導入できたとしても、4WDに加えてディーゼルエンジンとなると価格の高騰は避けられないはず。となるとFFガソリンのみのラインナップも致し方無いところだろう。

  • デザイン、性能ともに行き先を選ばないものであることが、ヴァカンスに使用できるクルマの条件とも言える

乗り味は、SUVにありがちな腰高感はほとんどなく、むしろスポーティさすら感じるハンドリング。これならルーテシアやメガーヌからの乗り換えでも違和感なく乗ることができそうだ。19インチと大径のホイールを装着していながらも足元がバタバタする感覚も少なく、この辺りの味付けはさすがルノーといったところ。ここまで走りが良いと「カジャーRS」が登場してもいいのではないかと思ってしまうほどであった。

販売上でのライバルは、同じフランス車であるプジョー・3008。カジャー同様にSUVスタイルを持つ3008だが、どちらも前輪駆動モデルとなる。カジャーと同等の装備を持つグレードは「Allure LED Package」となるが、価格はカジャーの347万円に対して372万円~(どちらも税込)とやや高価に。しかし、エンジンは1.6リッターターボとなるため一概に単純比較はできないところ。完成度はどちらの車種も高いので、完全に好みで選択して問題ないだろう。