日本におけるビジネスジェットの壁をANAが壊す

また同日の28日、ANAHDはHACIと戦略的パートナーシップを提携した。具体的な提携内容としては、ANAはホンダジェットの保有もしくは利用を希望する顧客層の拡大をサポートするとともに、乗り継ぎ便チャーターでのホンダジェットを活用した共同プロモーション、状況に応じてホンダジェット購入希望者の顧客紹介を担う。HACIの方は、乗り継ぎ便チャーターにおけるサービスエリア拡大に向けたサポートを展開する。

  • ホンダ エアクラフト カンパニー社長の藤野道格氏

    ホンダ エアクラフト カンパニー社長の藤野道格氏

日本におけるビジネスジェット市場に対して藤野社長は、「ビジネスの効率を重視する欧米ではビジネスジェットを使うことは一般的で、ビジネスツールのひとつとなっています。特に欧米では、小型ビジネスジェットのチャーター運用が近年増加しており、日本においても海外からのビジネスジェットの発着回数が増加しています」と話す。

ただし、日本における壁の大きさを藤野社長自身も感じており、その理由としてエモーショナルな部分を挙げている。例えば、日本は欧米に比べて富裕層におけるビジネスジェットの保有機数が圧倒的に少なく、ビジネスジェットをどのように使えばいいのか、使うことによってどのようなメリットがあるのかというのが、まだ広く認知されていない傾向がある。その点において、公共交通を提供しているANAが果たす役割は大きいと言えるだろう。

また、2016~2017年において、羽田空港におけるビジネスジェットのスロットも1日8枠から16枠に増えており、ビジネスジェット枠の優先順位も以前は6番目だったのが4番目まで上がっている。地方空港に目を移しても、ホンダジェットが乗り入れできる空港は84カ所ある。実際、藤野社長も羽田=仙台を30分で移動できたと話し、その圧倒的なスピードは、日本であってもビジネスにおける優位性は十分発揮できると確信している。

  • ANAHDがもつセールス力や運航会社としての公共性、双日がもつビジネスジェットのノウハウ、HACIがもつ新常識なホンダジェットで新しい流れを起こす

    ANAHDがもつセールス力や運航会社としての公共性、双日がもつビジネスジェットのノウハウ、HACIがもつ新常識なホンダジェットで新しい流れを起こす

快適キャビンは寛ぎ空間にも仕事空間にも

ホンダジェットは、主翼上面のエンジン配置(Over-The-Wing Engine Mount)形態や自然層流翼型、一体成型複合材(炭素繊維強化プラスチック)胴体などのHonda独自開発技術を搭載した小型ビジネスジェット機。こうした技術により、クラス最高水準(Honda調べ、小型ジェット機として)の最高速度、最大運用高度、上昇性能、燃費性能、静粛性および室内サイズを実現した。

  • 2017年には小型ジェット機カテゴリーのデリバリー数において、世界No.1(General Aviation Manufacturers Association(GAMA)調べ)を達成

    2017年には小型ジェット機カテゴリーのデリバリー数において、世界No.1(General Aviation Manufacturers Association(GAMA)調べ)を達成

  • 主翼と胴体ノーズ部には物体周りのスムーズな空気の流れを最大化させるNLF(自然層流)技術を採用。ノーズ部はフェラガモのハイヒールから着想を得ている

    主翼と胴体ノーズ部には物体周りのスムーズな空気の流れを最大化させるNLF(自然層流)技術を採用。ノーズ部はフェラガモのハイヒールから着想を得ている

ホンダジェットはシングルパイロットでの運用が可能であり、大きくとられたコックピット空間で視界の広さと快適性を高めている。3台の14インチ高解像度ディスプレイを備え、操縦を行うヨークにはパイロットが使用する操縦機能がコンパクトにまとめられており、アイコンを使用した2台のタッチスクリーンコントローラーで飛行機の直感的な操作を可能にする。

  • いざ、機内へ

    いざ、機内へ

  • コックピットには、次世代オールグラスアビオニクスシステムGarmin G3000を搭載
  • 操縦機能がコンパクトにまとめられたヨークやタッチスクリーンコントローラー等を備える

定員は標準仕様で乗員1人+乗客5人、最大仕様で乗員1人+乗客6人であり、4人がゆったりと座れるクラブ配置のシートと、オプションとして横向きのシートの設定が可能となっている。エグゼクティブシードは座面が前後左右に動くほか、回転も可能。座席間距離は218cmとクラス最大の広さを確保している。窓は電子調光シェードとなる。

  • 定員は最大仕様で乗員1人+乗客6人

    定員は最大仕様で乗員1人+乗客6人

  • シートはフルフラットにはならないものの、前後左右に動くほか、回転も可能で、自由な環境をつくれる。窓には電子調光シェードを搭載

    シートはフルフラットにはならないものの、前後左右に動くほか、回転も可能で、自由な環境をつくれる。窓には電子調光シェードを搭載

後方には完全プライバシーを確保できる化粧室として、流水洗浄式トイレと化粧台を設備。また、荷物室はノーズ部と胴体後部にあり、容量はゴルフバッグ6個が積載できるクラス最大の1.87立方メートルを確保している。

  • プライベートを確保した化粧室には天窓を採用。洗面台も装着できる

2015年12月に米国連邦航空局(Federal Aviation Administration)から型式証明を取得した後、北米、欧州、中南米、東南アジアおよび中国に販売およびサービスネットワークを広げ、直近では2018年3月にはインドでの販売を開始した。2017年には小型ジェット機カテゴリーのデリバリー数において、世界No.1(General Aviation Manufacturers Association(GAMA)調べ)を達成した。

国内を見てみると、JALも2017年5月に、フランス大手ビジネスジェットオペレーターのダッソー・ファルコン・サービスと提携して、東京=パリ間の定期便とビジネスジェットのチャーターサービスを組み合わせた「JAL FALCONビジネスジェットサービス」の販売を開始した。JALとの差別化として、ANAビジネスジェットでは小型から大型までの様々な機材を運用することで、幅広いサービスを展開できることを片野坂社長は強調した。

また、"ANAらしさ"という意味では、例えば機内食の提供やマイレージサービスの展開も考えられるだろう。限られた空間の小型機では、客室乗務員によるサービスは限度があるが、マイレージサービスに関してはすぐ適応できるものではないものの、利用者から当然出てくるニーズだととらえ、今後検討するとしている。

マイレージに限らずあらゆるサービスに関して、「私たちは全くニューチャレンジャーですので、まずはやってみてどのようなニーズが出てくるのか、例えば、ANAに乗って長距離で現地に行くまでの間にご提供するようなニーズがあれば、提供できればと思っています」と片野坂社長は話している。