ANAホールディングス(ANAHD)と双日は3月28日、共同でビジネスジェット チャーター手配会社「ANAビジネスジェット株式会社」を設立すると発表した。2018年夏から北米で小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」も活用したチャーターサービスを展開し、2019年度にはハワイに拡大することで、A380導入予定のホノルル線の競争力を高める。
きっかけは常識破りなホンダジェット
日本初のビジネスジェット専門旅行会社となるANAビジネスジェットは、まず4月に、ANAHD内に「ビジネスジェット準備室」設置を経て、2018年夏に本社所在地を東京として設立を予定。資本金は2億円であり、出資比率はANAHDが51%、双日が49%となる。
ANAビジネスジェットは今後、2018年夏に北米(ロサンゼルス/シカゴ)にて乗り継ぎ便や日本直行便の展開を予定している。ニーズの多くは乗り継ぎ便と双日代表取締役社長の藤本昌義氏も考えており、北米のハブ空港に到着するANAの定期便からホンダジェットに乗り継ぎ、日本から北米の目的地までをダイレクトに結ぶ展開を構想している。
2018年度下期には欧州(拠点検討中)での乗り継ぎ便、2019年度にはホノルルにて運航・整備基盤の立ち上げを支援した上で、ホノルルでの乗り継ぎ便の展開を目指す。ホノルルでの展開はいわゆる"アイランドホッピング"と言われるもので、ANAが2019年春に予定しているA380導入とともに、ホンダジェットを用いたハイエンドなサービスでホノルルでのサービス拡充を図る。さらにその先ではアジアでの展開を視野に入れている。
チャーター便の運用に加えて、最終目的地までの地上手配業務(コンシェルジュサービス)も展開する。ターゲット層は、企業の経営層と政府・団体ミッション、さらには、ANAセールスの旅行商品と連携することでハイエンド旅行にも拡大させる。
パートナーの双日は、"空のコンシェルジュ"をコンセプトに、2003年に日本で先駆的にビジネスジェット事業を開始。2005年よりビジネスジェットの運航・チャーター販売会社に出資することで、機体の販売のみならず、運航・整備体制の構築、チャーター販売、機体売却といったサービスを展開してきた。ビジネスジェット事業は時間にして計1万時間以上のチャーター販売の実績があるなど、双日は日本国内においてビジネスジェットのトップ企業となっている。
双日とANAHDは、機材調達における長年の信頼関係に加え、2006年には双日とANAが設立したパイロット派遣会社での協業経験もある。今回の合同会社の設立においても、互いの強みを生かすかたちで、日本初のビジネスジェット専門旅行会社となるANAビジネスジェット設立に向けて動き始めることとなった。
ANAHDがビジネスジェットを活用したチャーター手配事業を始めるきっかけとなったのは、ホンダ エアクラフト カンパニー(HACI)社長の藤野道格氏との出会いだったとANAHD代表取締役社長の片野坂真哉氏は言う。その出会いについて、「3年前に藤野社長に出会い、ホンダジェットの将来性への熱い想いを感じ、非常に強いインパクトを感じました。ANAのグローバルネットワークをこれから高めていく上で、経済性の優れたホンダジェットが加わることで新たな価値を提供できることを確信しました」と話している。
時間的な価値の最大化で50%の時間削減も可能
欧米ではビジネスジョットは効率的な移動手段として浸透しているものの、日本においては「ぜいたく品」「一部の富裕層のもの」というイメージがもたれている。その中で、運航会社であるANAHDが展開することで、時間的な価値を買うための、より公共性のある乗り物であるという認知拡大を目指すとともに、ANAHDがもつ法人販売ネットワークで企業の経営層と政府・団体ミッションも含めた新たな層への拡大を図る。
ビジネスジェットの最大メリットは時間的な価値の最大化にあり、大きく4つに分けると、「オンデマンド・チャーター便」「ストレスフリーな空港乗り継ぎ」「機内での打ち合わせ」「プライバシーの完全確保」が上げられる。例えば、実際の運航便で試算したところ、ロサンゼルス・フェニックス・サンフランシスコを巡る場合、宿泊・移動・実働が4日間から2日間に、最大50%も時間が削減できるという。
なお、手配可能なビジネスジェットは小型なホンダジェット(席数1~7席/航続距離2,265km)のほか、大型の「グローバル 6000」「ガルフストリーム G650」(席数8~19席/航続距離1万1,000km)や、中型「チャレンジャー 350」「ガルフストリーム G450」(席数8~12席/航続距離6,000km)があり、ニーズに合わせて選べるようになっている。また、双日は成田に大型ビジネスジェット(6機)とB737BBJ(1機)を保有している。
ANAビジネスジェットは手配会社であり、機材を保有せず、高い安全性・運航会社と契約してその会社が保有する飛行機を使い分けて展開することで、顧客の多様なニーズにフレキシブルに対応していく。事業としては、まずは日本人需要に応えるサービスを提供し、3~5年を目安として10億円程度の収益を目指す。