また、精神療法でも取り入れられている「アサーショントレーニング」も無用なストレスを避けるのに役立つという。これはコミュニケーションスキルの一つであり、相手のことも尊重・配慮しながら、自分の感情(意志、意見、要求、希望など)を伝える方法だ。

「例えば、仕事が多すぎて手一杯のタイミングで上司から頼み事をされたとします。そんなときはすぐに『無理です』と断るのではなく、『いつも頼っていただいてありがとうございます』と返してみましょう。そのうえで『この仕事は自分の得意(もしくは専門)分野ですので、今すぐにやりたいのですが、あいにくこういった事情でこちらの仕事を優先しないといけません。返ってご迷惑をかけるといけませんので、申し訳ございませんが他の方に頼んでいただけますでしょうか』と言ってみるといいでしょう」

行きたくない飲み会の「正しい断り方」

同僚や上司に行きたくない飲み会に誘われた際には、どうしたらよいだろうか。そのようなときはまず、「お誘いありがとうございます」と伝える。それから「●●さんのお話はぜひお聞きしたかったのですが、家族との約束がありまして……」といった具合に、いったん相手の気持ちを受け入れてから事情を詳しく説明し、参加不可能である旨を話すとよいとのこと。

「誠心誠意相手に伝えれば、誘いを断られたからといって相手が不快になったり、あなたが嫌われたりすることはありません。そもそも、あなた自身がこのように誰かに断られたとして、その人のことを嫌いになったり、『もう二度と頼まない! 誘わない!! 』と思ったりするでしょうか? 断りの言葉だけでなく、+αの言葉がとても大事です」

苦手な人とは距離を置いて付き合うのが一番だが、職場の同僚や上司、取引先の相手など、どうしても関わらないといけないケースは往々にしてある。そのような場合は、「仕事だけの関係」と割り切って、プライベートまで無理に合わせる必要はない。

オンとオフをきちんと区別し、オフのときは各々に合った方法で日ごろのストレスを発散するようにしてほしい。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 髙木希奈(タカギ・キナ)

精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本精神神経学会認定指導医、日本医師会認定産業医。長野県出身。聖マリアンナ医科大学卒業。現在は、精神科単科の病院で精神科救急を中心に急性期治療にあたっている。また、産業医として企業にも勤務している。著書に『あなたの周りの身近な狂気』(セブン&アイ出版)、『間取りの恋愛心理学』(三五館)、『精神科女医が本気で考えた 心と体を満足させるセックス』(徳間書店)、電子書籍『女医が教える飽きないエッチ』(App Store、Kindle)など。趣味は、海外旅行とスキューバダイビング。オフィシャルブログはこちら。