岐阜県に国内最大級&日本唯一の航空と宇宙の本格専門博物館「岐阜かかみがはら航空宇宙博物館」、愛称「空宙博」(そらはく)が3月24日、誕生する。展示面積9,400平方メートルは国内最大級。実機34機+実物大模型9機の計43機の展示機体数も日本最多。ここでしか見られない貴重な展示物が目白押しだ。
飛行場開設から100年以上の歴史を持つ各務原
前身は平成8(1996)年に開館した「かかみがはら航空宇宙科学博物館」。従来は各務原市立だったが岐阜県も参画することで、大々的なリニューアルが実現。展示場の規模は実に1.7倍にスケールアップしている。
岐阜県は航空宇宙産業の事業所数、従業員数が愛知県についで国内2位で、各務原市に飛行場が設けられて約100年(大正6(1917)年開設)と航空機産業の歴史も古い。日本を代表するミュージアムの開設には、こうした土地柄も背景となっている。
敷地に入ると、鮮やかなブルーの館の外観、そしてその前に国産初の旅客機YS-11A-500Rなど大型の機体4機がズラリと並び、館に入る前からテンションが上がる。
体験しながら世界と日本の飛行機を知る
館内はA(Aviation=航空)とS(Space=宇宙)ゾーンに大別される。最初の展示室A1では、ライト兄弟が人類で初めて空を飛んだ動力飛行機「ライトフライヤー」の実物大模型と、日本初の量産型航空機「乙式1型偵察機 サルムソン2A2」の復元機を展示。世界と日本の航空機の始まりから見学がスタートする仕組みで、体系立てられた展示の流れを印象づける。
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A1ゾーン。「乙式1型偵察機 サルムソン2A2」(復元・右)は仏サルムソン社の規格を元に、大正末期から日本で初めて量産された航空機。「ライトフライヤー」(実物大模型・左)はライト兄弟によって人類が初めて空を飛んだ動力飛行機
「戦前・戦中の航空機開発」がテーマのA2ゾーンは目玉の機体2機がそろい踏み。日本で唯一現存する「三式戦闘機『飛燕』」の本物の機体、そして「零戦」試作初号機の実物大模型だ。飛燕は鹿児島の知覧特攻平和会館から移され、製造元の川崎重工業がレストアしたもの。迷彩柄の塗装をあえてはがしてジュラルミンむき出しの本来の姿となっている。
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A2ゾーン。「三式戦闘機『飛燕』」(実機・左)は第2次世界大戦時に日本帝国陸軍が開発、川崎航空機が製造した国産戦闘機。館のリニューアルに合わせて鹿児島の知覧特攻平和会館から里帰りした。「零戦 試作初号機」(実物大模型・右)は戦時中に各務原飛行場で初飛行したものを忠実に復元
零戦試作機は実は資料が乏しく、塗装や細部の形状は不明な点が多かったのだそう。わずかに残る資料を元に研究家の監修を受け、原型を忠実に再現した。
A3はメインとなる展示スペース。広々とした空間に20機の実機がズラリと並ぶ様は壮観。旧施設を大幅に拡張したもので、機体の姿を全方位からぐるりと見ることができ、さらには2階から見下ろすこともできる。戦後、GHQによって航空機の製造が禁止された"空白の7年間"を経て、再び空へ舞い上がった国産飛行機の名機たちを年代順に展示しているので、日本の航空機産業の発展の変遷をその目で確認できる構成となっている。
A4ゾーンは、航空機の仕組みを学ぶ体験ゾーン。小型航空機と大型旅客機、ヘリコプターの操縦シミュレーター、航空機の設計体験などができる。シミュレーターはレベルに応じてコースを選べるので、リピーターになって徐々にレベルアップを目指すのも楽しそうだ。
お土産やグルメにも航空・宇宙がいっぱい
宇宙をテーマとしたSゾーンもテーマごとに1~5のスペースに分けられ、日本人宇宙飛行士らが様々な実験を行った実験棟「きぼう」の実物大模型など、スケールが大きくリアルな展示物が充実。きぼうの実験アームの操縦体験、自分自身がはやぶさになりきってのシミュレーターなど体験メニューもあり、楽しみながら宇宙を身近に感じることができる。
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S4ゾーン。現在、金井宇宙飛行士が滞在して様々なミッションにチャレンジしているISS(国際宇宙ステーション)の日本実験棟「きぼう」の実物大模型。内部に入ることもでき、宇宙飛行士のメモ書きなどもリアルに再現している
機体の充実でスケールが大きく、体験メニューも豊富なので楽しみながら、学び、気づきがある。マニアはもちろんだが、飛行機やロケットに深く興味がなかった子どもたちでも引き込まれるに違いない。
館内には「空宙博カフェ」も備えている。「そらはくスターデニッシュ」(750円)や「飛行機キッズプレート」(850円)、「宇宙の星空カレー」(800円)など、インスタ映えするかわいいメニューがいっぱい。また、ショップコーナーにはお土産にもぴったりな約800アイテムを取りそろえている。およそ1/4がオリジナルグッズのため、買い忘れのないように。
アクセスは名鉄岐阜駅からだと名鉄とバスでスムーズに乗り継げば30分ほど。名古屋からだと1時間少々。名古屋や岐阜市内の観光と合わせて、または航空機ファンなら、隣の愛知県に昨年オープンした「あいち航空ミュージアム」、同じく愛知県立名古屋空港内にある「MRJミュージアム」とはしごしてみるのもいいだろう。
●information
岐阜かかみがはら航空宇宙博物館
住所: 岐阜県各務原市下切町5-1
入館料: 大人800円、高校生・60歳以上500円、中学生以下無料
アクセス: 名鉄各務原市役所前駅よりふれあいバスで最短14分、車の場合東海北陸自動車道岐阜各務原ICより約10分
開館時間: 10:00~17:00(土日祝は18:00まで)
定休日: 第1火曜(祝日の場合開館、翌日休)、年末年始
※価格は全て税込
筆者プロフィール: 大竹敏之(おおたけとしゆき)
名古屋在住のフリーライター。雑誌、新聞、Webなど幅広い媒体で名古屋情報を発信する。名古屋メシ関連の著作を数多く出版。著書に『名古屋の喫茶店』『名古屋の居酒屋』『名古屋メン』『名古屋めし』(リベラル社)、『名古屋の商店街』(PHP研究所)、『東海の和菓子名店』(ぴあ中部支局/共著: 森崎美穂子)などがある。Webガイドサイト「オールアバウト」名古屋ガイド。愛知県や名古屋市などの協同プロジェクト、なごやめし普及促進協議会ではアドバイザーを務める。