日常もサーキットもこなすポルシェのクルマ

ポルシェの「911 タルガ 4 GTS」は、911シリーズの中でも自然吸気エンジンで高性能な位置づけの車種であり、水平対向6気筒エンジンは450馬力に達する。911の特徴としてエンジンは車体後部に搭載されるが、GTSの車名に付く「4」の数字は4輪駆動であることを示している。試乗車の変速機は7速の「PDK」で、これは2つのクラッチを交互に使うことで自動変速を可能にするシステムだ。最高速度は時速306キロに達し、発進から時速100キロまでの加速はたった3.7秒である。

  • ポルシェ「911 タルガ 4 GTS」

    屋根が開くのも特徴の「911 タルガ 4 GTS」

超高性能な「911 タルガ 4 GTS」ではあるが、日常的な運転では実に操作がしやすく、簡単にいえば乗用車と変わらない気軽さがある。昔からポルシェは、日々の足としても、サーキット走行も、両方をこなせるGTカーと価値づけられてきた。

今日でこそ、フェラーリなどのスポーツカーも運転しやすくなってきているが、ポルシェは昔から日常性を備えており、それはスポーツカーとGTカーの意味の違いによるところである。

ポルシェもフェラーリも日本ではスポーツカーと呼ばれるが、スポーツカーは運転を楽しむためのクルマであり、GTカーは「Grand Touring」(長距離移動)するためのクルマである。ただし、のんびりと旅をするだけでなく、高速で短時間に目的地を目指す高い性能を備えていることがGTカーの証だ。

  • ポルシェ「911 タルガ 4 GTS」

    長距離移動もこなせるのがGTカーの証だ

速度無制限区間のあるドイツでは、目的地に早く到着できるか、あるいは到着時間を正確に予測できるかが生活の基盤となっている。そのために最適なクルマがポルシェというわけだ。もちろん、メルセデス・ベンツもBMWも同様の価値を共有する。

リアエンジン・リアドライブの乗り味は唯一無二

ポルシェ911は1964年の誕生以来、車体の後にエンジンを搭載し、後輪で駆動することを基本に設計・開発されてきた。時代とともに高性能化しながら、速さと同時に安定して高速走行を維持できる操縦性も磨いてきた。そうした中で、今日のポルシェ911を運転してなお変わらない特色は、他のドイツ車のようにがっちりとした車体剛性ではなく、どこか力をいなすような柔軟性に富んだ運転感覚を伝えてくるところにある。

  • ポルシェ「911 タルガ 4 GTS」

    ポルシェを運転して感じるのは、力をいなすような柔軟性だ

それは、マシンを操作しているというより、馬を操っているような生き物同士の絆を覚えさせるのである。この部分は、他のスポーツカーと異なる。その訳は、何百馬力ものエンジンを車体後部に搭載し、基本的に後輪で駆動する独特な機構によるだろう。

ポルシェ911が誕生した50年以上も前の時代、アウトバーンにおいて時速200キロ以上で走行し続けるには、当時の貧弱なタイヤ性能をカバーしたり、空気抵抗を低減したりするため、車体の後部にエンジンを積むことでタイヤを強く接地させ、車体前側は流線形を描けるよう、薄い造形であることが必要であったはずだ。しかし、その配置は前後重量配分の悪さを生み出す。後部が重すぎるのだ。そのままエンジンを高性能化していけば、後輪に必要以上の負担がかかり、運転が難しくなる。

  • ポルシェ「911 タルガ 4 GTS」

    前方のボンネットはトランクになっている

それを穏やかに、運転しやすくするためには、硬すぎる車体剛性は不適当であり、余分な力をいなすしなやかさが求められる。それがポルシェ911ならではの乗り味になっているのである。この運転感覚を求めるなら、ポルシェでなければならない。