「ユニクロ」のファーストリテイリングにも在籍

3年半前の2014年7月に、ボルボ・カー・ジャパンの代表取締役社長に就任したのが、木村隆之氏である。木村氏は、トヨタ自動車、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング、日産自動車を経て、ボルボ・カー・ジャパンの社長に就任した。自動車会社の社長になりたいとの明確な意志を持ってキャリアを積んだ人だが、それが異色に見える過去の経歴にも表れている。

「自動車業界には開発、生産、購買、営業などいろいろな部門がありますが、それらの機能を束ね、お客様志向かつ会社最適で動かしていくと、業績が変わるような気がしたのです。単に販売やマーケティングのトップで終わるのではなく、トヨタに在籍した当時から経営をしたいという考えでした。ファーストリテイリングは海外展開やM&Aで子会社の社長が大勢必要とのことで、柳井正社長に『どこかで社長が必要になるから来なよ』と言っていただきました」(以下、発言は木村社長)

  • ボルボ・カー・ジャパンの木村社長

    社長になりたいと明確に考えていたという木村氏

クルマの会社を率いるのに必要なものとは

そして、トヨタを飛び出す。約10年前のことだ。「いま私は53歳ですが、トヨタ社内で例えば、子会社の社長になるような頃までは待っていられないと思ったのです」と木村社長は当時を振り返る。その後は、ファーストリテイリング入社からわずか2年で日産自動車へ移ることになった。

「日産が自動車業界に引き戻してくれました」。インドネシア日産、アジアパシフィック日産兼タイ日産で社長を経験し、そこからボルボ・カー・ジャパンへという流れである。同社で初の日本人社長となった。

  • ボルボスタジオ青山の外観

    異業種と海外を経験し、木村氏はボルボ・カー・ジャパンの社長に就任した(画像はボルボスタジオ青山で撮影)

「これまでに自動車会社の社長を計9年やっていることになります。そこで改めて実感するのは、クルマには多くの機能や部門があり、それらが個々に一流でないと生き残れないのですが、一方で、各部門が一流であろうとして突き詰めていくと、部門間の対立が起こります。それが強まると、お客様志向や、会社最適ができなくなるのが自動車会社の性といえます。それであるからこそ、自動車会社を引っ張っていけるうまい経営は、腕の見せ所といえます」

いよいよ、木村社長の本領が日本市場で発揮されることになった。それが、2014年7月である。