ブランド再建、手始めは「安全」イメージのアップデート
では、ブランドをどう立て直していったのか。
「日本でのボルボに対するお客様の印象は、悪いものではありませんでした。上質であるとか、安全であるといった感じです。しかし安全については、『ぶつかっても死なない』という古い印象のままでした。今は、『ぶつからないクルマ』という先進的な安全を競う時代になっています。そこが伝わっていませんでした」
木村社長が就任して間もなくの2014年12月に、「IntelliSafe10(インテリセーフ・テン)」と銘打ち、先進の安全装備や運転支援機能を全ての車種、全てのグレードに標準装備することを始めた。ボルボにおける先進安全技術の充実ぶりを、顧客は目の当たりにしたはずだ。これまでは、車種やグレードによって装備される内容が違っていたり、注文装備となっていたりした。先進安全技術を切り売りすることで車種やグレードの差別化はできても、ボルボ全体の安全思想は伝わりにくかった。
スウェーデンのクルマであること自体も魅力の1つ
「それから、実直なクルマという良い印象はあっても、スウェーデンのクルマだということは、オーナー以外の方にあまり知られていませんでした。国内でプレミアムブランドというと、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのジャーマン3とレクサスで、そこへボルボが食い込むには、スウェーデンという要素が欠かせません。そこを強化しようと考えました」。創業時より安全を何より優先したクルマ開発をしてきた歴史や技術に加え、北欧の雰囲気を伝える「スカンジナビアン・デザイン」など、ボルボはお国柄も自社製品の魅力として打ち出している。
「ボルボは技術中心ではなく、『デザインド・アラウンド・ユー』(Designed Around You)というブランド戦略のもと、人を中心とした素晴らしいクルマ作りの思想があります。運転する人だけでなく、大切な人や物を守ることをこの言葉はいっています。人が中心というのであれば、顧客満足度で一番を目指すべきです。CS(Customer Satisfaction)ナンバーワンの活動を始めることで、JDパワー(調査会社)の調査で輸入車1位になれました。ブランドが本来持っているものを接客の現場で実践し、お客様へ伝えることがブランド再構築の基本であり、大事なことです」