▼声優として腹をくくったいまだからこそ歌える楽曲

――ここからは楽曲についてお聞きしていきます。まずはミニアルバムのタイトル『Flora』という名前の由来から。

私は名前に「花」がついているので、花をモチーフにしたくて、スタッフさんと相談しながら付けました。「Flora」には花の女神という意味があるらしいんですけど……最初は「私が女神って」と(笑)。

――ファンクラブの名前も「Flower Cheers!」ですもんね。「花」に対してこだわりがあるのかなと思っているんですけど、お好きなんですか?

(小声で)それがまったく……。花心というものはまったくないですね(笑)。今回は全6曲それぞれ花や花言葉をテーマにして楽曲をつくってもらっているのに。全曲レコーディングが終わってギリギリで『Flora』というタイトルを付けたんですけど、改めて考えるとこのタイトルで良かったと思います。

――では1曲目の「REALISTIC」。クールめな楽曲で、どこか懐かしさを感じます。

この曲は最初にレコーディングをしたので、「どう歌えば良いんだろう」と変な色気を出す前でしたね。はじめて自分のために作っていただいた曲だったので、すごくうれしくて……! 歌詞も私をイメージして書いていただいたので、これは全力で歌おうと思って、ありのまま歌いました。

――表現したことがストレートにつづられているとおっしゃっていましたね。

はい。"期待して 何度だって傷ついてきた だからもう ふわっと夢なんか語らない"の歌詞が気に入っています。私がいま10代だったら、ふわっと夢を語っていたと思うんですよ。いまは地に足をつけて声優としてがんばっているんですけど、当時は学生をしながらタレント活動をして「この先どうしようかなあ」とふわふわしていた。声優として腹をくくったいまだからこそ歌える楽曲かなと思います。

――今回、初のMV収録だったと思いますけどいかがでした?

ほんっと楽しかったです! 廃墟みたいなところから始まってサビにいくにつれて鮮やかになっていきますよね。いっぱいのお花の前で歌っているシーンも、あれは金網にお花が咲いているので、ただきれいなだけではなく、力強さも残しつつというイメージなんですよ。顔を出してお芝居をするということはなかなかないので、そこも楽しかったですね。

――ダンスもキレキレでした。

もともと踊れる歌曲が欲しかったのでお願いしていたら、それがこの「REALISTIC」になりました。練習をしているときは良かったんですけど、実際に衣装を着てブーツを履いて踊ったら、思いの外ヒールが高くて(笑)。このヒールを履いたまま格好よく見せるにはどうしたらいいのかを考えながらレッスンをしていました。いつかライブでも踊るのかなと思います。


――2曲目は真っ赤なバラをイメージさせる「Flaming Rose」。

「Flaming Rose」は「REALISTIC」とはまた違ったベクトルの強さを出したかった楽曲です。レコーディングでは2番目に収録をしていて、一番壁にぶつかったときですね。「私が歌うには申し訳ないな」というくらい格好良い歌詞なので、どう表現するかをずっと考えていました。考えた結果、「赤いリップの女性が歌うんだったらしっくりくるな」と。小悪魔感だったり、女性的な強さだったりを出せたらいいなと歌っていきました。

――3曲目は「赤いアネモネ」。

ここではじめて弱さが出てきましたね。それと、懐かしい感じの楽曲は好きですし、入れたかったんですよ。

――「アネモネ」の花言葉は「はかない恋」「恋の苦しみ」「見捨てられた」ですけど、「赤いアネモネ」になると「君を愛す」になる。「赤い」があるだけで、ただ悲恋かと思いきや、すごく大人っぽい印象の楽曲になりますね。

作詞のSatomiさんは、裏の読みがいがある歌詞、想像するのが楽しい歌詞を書いてくださる方なんですよ。切ない曲ではあるんですけど、ストーリーが見えやすかったので歌いやすかったですね

▼自分という軸

――続く5曲目の「Say Goodbye」。終わってしまったけど、記憶のなかにある「君」を思い出しているという楽曲です。

「赤いアネモネ」や「Say Goodbye」は、「ここをこうしたらエモみが出るんじゃない?」みたいな話をスタッフさんとしながら、曲を組み立てていきました。メロディだけを聴くと暗いというよりも、むしろさわやかな感じがしますよね。でも、歌詞を読むと未練やしこりがあるんだろうという。だけど日々は止まらないから、進んでいかなければいけないんですよね。次の「marguerite」もそうですけど、歌ってて楽しい楽曲でしたね。

――「marguerite」はポップなメロディと、花占いをするくらいだけど、"まるで少女みたい"という、絶妙な年齢の女性の曲になりました。

花占いがテーマの楽曲なので「ザ・かわいい」みたいな楽曲なんですけど、最後のほうの歌詞がすごく好きなんですよ。(小声で低音になりながら)"いつかはあなたに 言わせてみせるわ 私を好きだって 必ず"。圧を感じる……。これは良い性格してんなあって(笑)。

――ははは。そういえば2月の誕生花はマーガレットらしいですね。

あら、ありがたや。

――楽曲の主人公と立花さんは似ている部分はありますか?

うーむ。決して私はなれない感じの子ですねえ。だからこそ「こういうかわいい女の子いいなあ」という憧れを詰め込みました。まるで少女みたいな、そんな恋をしてみたいもんですなぁ……。

――えーと……。さ、最後の楽曲は「gradation」。「移ろい」「辛抱強さ」といった花言葉を持つあじさいをテーマにした楽曲です。

音の数が少なく、心地よい音色なので、歌っていて気持ちよかったですね。実は偶然にもミニアルバムの収録順とレコーディングの順番が同じなんですよ。むき出しの状態で歌った「REALISTIC」を経て「gradation」へとたどり着いたんですけど、「gradation」が一番素の状態で歌えた気がします。

――ライブで弾き語りをするようなシーンが浮かびました。

私はピアノをやっていたので、どこかのタイミングで弾き語りができればいいなと思っています。あと、バイオリンの音色も入っていて、好きな楽器を詰めていただいた私得な楽曲ですね。個人的にはカラオケバージョンが欲しいです!

――今回のアルバムに収録されている楽曲は、全体的に大人っぽいイメージが多かったです。立花さんが思う大人とはなんでしょう?

大人かあ、なんだろう。あ、大人の方がわがままだなって思いますね。子どものころと違って、ダメッて言ってくる人が圧倒的に少ないですよね。「大人のやりたいこと」って、やろうと思えばやれることが多い。その中で自分の軸がぶれないように……あ、いまからすごいかっこいいこというな私。(きれいな声で)だからこそ、自分という軸がぶれないようにすることが大事だなと、今回改めて感じました。

――いまぶれてませんでした?

だ、大丈夫なはずです。

――では、自分のことを大人だなと思った瞬間は?

20歳そこそこのころは、人が間違っていることをしたら「こうした方がいいよ」とはっきり言っていたんですけど、ここ数年は言わなくなりましたね。決してその人を見捨てているわけではなく、その人なりの正義があるんだなということがわかったんです。そこを考えることができる大人になれたんだなって。あとは、ひたすらお酒を飲んでると「大人っぽい」とか言われますね(笑)。いやー、好きでねえ……。