▼忘れられなかった声優への夢

――「立花理香 お酒について語る」のインタビューは以上で、ここからは「声優 立花理香ができるまで」についてお聞きしたいと思っていまして。

はーい!

――立花さんはもともと関西でタレント活動をされていたので声優という職業とは縁遠かった。なので、現在に至るまでのお話をお聞きしたいと思っています。

大学院生だった当時、京都に住んでいたんですよ。そのときに、京都の四条河原町という夜のお店のスカウトが多い場所を歩いていたら、「お姉さんちょっと」って声をかけられて。素通りしようとしたら「怪しい仕事じゃありません」と言われて「これが怪しくなかったらなんなんだ」って感じじゃないですか(笑)。そこで「芸能の仕事です」と名刺を出されたんですよ。

――そこで話を聞いて?

はい。ちょっと試してやろうじゃないですけど、「この人はどうやって私を丸め込もうとするんだろう」と思って、話を聞きに行こうと。

――好奇心だったんだ。

不純な動機でしたね(笑)。

――立花さんは心理学を専攻していたので、そういうのが関係しているのかな。

そうかもしれないです。もともと人自体に興味はあったし、「自分だけは催眠術には引っかからないぞ」という根拠のない自信があったんですよ。なので「どう出てくるんだろう」と思って話を聞いていました。

――それでタレント活動をスタートして、声優という仕事にシフトしていったわけですけど、どういった気持ちの変化があったんでしょうか。

もともとアニメやゲームが好きというのもあったんですけど、小学生のときに新聞広告に出ていた声優養成所のイラストを切り取るのが好きだったんです。それはイラストがかわいいから集めていただけなんですけど、そのうち内容も読むようになって、そこで声優という仕事に興味を持つようになりました。実はそのとき、親に内緒で養成所に履歴書を送っていたんです。

――それは何歳くらいのときですか?

小学校高学年ですね。だから履歴書の書き方もわからなかったんですよ。「扶養家族の有無ってなに?」みたいな(笑)。返事も郵送で戻ってくるので、親に見つかったらまずいので、私が郵便受けをチェックする係になっていました。結局、二次審査の返事がきて、未成年の人は親の承諾書がないとダメだってときに、親に見つかってしまったんです……。

――そこで説得に?

当時は広島に住んでいたので、「東京の養成所に行くより、ふつうに進学したほうがいい」「本当に声優になりたいんだったら高校を出てからでもいいでしょ」と言われて……、私はすんなり受け入れられなかったんですけど。

――一度、声優から遠ざかってしまう。

はい。なんだかんだ勉強も嫌いではなかったですし。でも、そこでアニメやゲーム、声優から離れてしまいました。そしてタレント活動をするようになって、たまたま「好きなアニメについて語っていい」というラジオ番組をさせてもらって、やっぱり「声優になりたいな」って思ったんです。アニメやゲームは好きだし、自分でつくる側になったら楽しいんだろうなって。

――思い立ってから行動するまでは早かったですか?

すぐでしたね。京都と東京を往復して事務所を探していたんですけど、1年以内には決着がつきました。

▼紆余曲折あったアーティストデビュー

――その後養成所に行って、声優として活動を始める。はじめての仕事ってなんでした?

とあるアプリのキャラクターボイスでした。収録するブースのなかには私ひとりしかいないので、どうしたらいいかわからなかったです。アニメだとブースの中に先輩たちもいるんですけど、もうどうしたらいいやら……、という感じでしたね。

――『アイドルマスター シンデレラガールズ』の小早川紗枝役はそのあとでしょうか。

はい。事務所に入るか入らないかくらいの時期にオーディションを受けさせてもらって、はじめて合格したのが『シンデレラガールズ』でした。それこそ当時は京都に住んでいたので、京都出身の小早川紗枝ちゃんはとはすごく運命的な出会いだと思いましたね。

――小早川紗枝もそうですけど、キャラクターソングを歌う機会も多いじゃないですか。もともと個人の名前を出して歌いたいという気持ちもあった?

いや~、個人で歌いたいという気持ちはなかったですね。歌に自信があったわけでもないですし、あくまで声優として東京に出てきたので、キャラクターのために歌うのはうれしいんですけど、「自分として歌うのはどういう気持ちでやればいいんだろう」って。でも、今回のアーティストデビューのお話をいただいたときにはすぐ「やります!」って。それも好奇心でしたね。

――それは時期でいうといつごろ?

2017年の秋くらいですね。やると決めてからはすべてが早かったです。ちょうど秋にはじめてのファンクラブイベントを予定していて、そこで何かを発表したいと思っていたので「じゃあここでデビューを発表しよう」と。あと、私の誕生日が2月27日なので「その周辺にミニアルバムを出したいです」と圧をかけて(笑)。いろいろ間に合わせていただいたんですよ。

――今回、実際にレコーディングして、キャラクターではなく個人として歌ってみて気付いたことなどは?

キャラクターソングは作品の世界観やキャラクターの良さを引き出すという風に目的がしっかりしているんですけど、自分として歌うときは、何を目的にすればいいのかわからなくて、それが最初にぶち当たった壁ですね。

――どうやってその壁を乗り越えていったのでしょう。

歌詞を読んでいる中で、キャラクターとして歌うときやお芝居をするときの作業と似ている部分が多いなと気付いたんです。歌詞を読んだときに流れがわからない文があっても、最後まで見てみるとその理由に気付くこともある。ここに気付いてからはスムーズにになりました。あとは、楽曲ごとにキャラクター設定というか、目的地を設定して、そこに向かっていきましたね。