劇場アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」完成披露イベントの様子。左から堀川憲司、石見舞菜香、岡田麿里監督。

劇場アニメ「さよならの朝に約束の花をかざろう」の完成披露イベントが、去る2月13日に東京・新宿バルト9にて開催された。

「さよならの朝に約束の花をかざろう」は10代半ばで外見の成長が止まり、その後数百年生き続ける、通称“別れの一族”と呼ばれるイオルフ族の民マキアと、幼くして両親を亡くした人間の男の子・エリアルの絆を描く物語。イベントには監督と脚本を務める岡田麿里、マキア役の石見舞菜香、プロデューサーの堀川憲司が登壇した。

これまで「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」の脚本や「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のシリーズ構成を手がけてきた岡田は、本作が初監督作品。企画は5年前からあったそうで、「堀川さんから『いつか岡田麿里を100%さらけ出した作品を観てみたい』と言っていただいて。100%ってなんだろうと考えたとき、100%自分が観たい作品なら近付けられるのかもと思い、堀川さんに『監督をやらせてください』とお願いしました」と語る。

テレビアニメ「凪のあすから」「花咲くいろは」でも岡田とタッグを組んでいる堀川は、「岡田さんの小説を原作にした作品を作りたいぐらいに思っていたんですが(笑)」とコメント。当時の状況について「飲み屋で『監督をやらせてください』とお願いされたとき、岡田さんはすごく緊張されていて。刺し身用の醤油を小皿に入れようとして、机にまき散らしてました」と暴露した。

岡田は初監督作品でファンタジーを選んだ理由を、「昔観てワクワクした劇場アニメにファンタジーが多かったというのと、監督をやらせてもらえるということでいつもと違う表現をしたかった。今回、総作画監督の石井百合子さんや美術監督の東地和生さんといったスタッフの皆さんと直接話し合うことができて、繊細にキャラクターの感情を切り取れると思ったんです。型にはまらない感情を描いてみたかった」と説明。また「凪のあすから」「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」といった自身が脚本を手がけた作品を挙げ、「キャラクターの時間経過が違うことで生まれる物語が好きなんです。それを掘り下げたかった」と語った。

マキア役の石見はキャラクターの絵を見ていない状態で、設定のみ教えてもらってオーディションに挑んだとのこと。自信がなかったと言う石見だが、岡田は「気が付いたらオーディション用の台本に『見つけた』と書いてました」と石見の演技に惹かれたと明かす。石見は「泣きそうです……!」とうれしそうな笑顔を見せ、「自分でイメージしたマキアちゃんに近付けたいと思って背伸びをして声を出していたんですが、監督が『舞菜香ちゃんのままでいい。そのままの声がマキアだから』と言ってくれました」と話す。

完成品の感想を聞かれた石見は「マキアは私だけで演じたわけではない。総作画監督の石井さんもキャラクターの感情になって描くと言ってらっしゃって。その話を聞いたとき、みんなの全部が詰まっているんだなと感じました」と回答。岡田は「作品って生き物なんだなと思いました。最後の追い上げの期間というのがあるんですが、そのときのスタッフの熱量がすごくて。最後の2、3カ月で作品が変わったんです。私はいつも脚本なので一番最初に入って最初に抜けてしまうポジションでした。今回、監督をやらせていただいて一番最後までみんなと一緒にいられたことがうれしかった」としみじみ述べた。

「さよならの朝に約束の花をかざろう」は2月24日より全国でロードショー。キャストには石見のほか入野自由、茅野愛衣、梶裕貴、沢城みゆき、細谷佳正、佐藤利奈、日笠陽子、久野美咲、杉田智和、平田広明らが名を連ねている。