JR西日本は1日、新たに策定した安全に関する5カ年計画「JR西日本グループ 鉄道安全考動計画2022」(2018~2022年度)について公表した。取組み内容のひとつに「より安全性の高い新製車両導入」も挙げられた。

  • JR西日本が新たな安全に関する5カ年計画「JR西日本グループ 鉄道安全考動計画2022」を策定

「JR西日本グループ 鉄道安全考動計画2022」では、安全の取組みの原点である2005年の福知山線列車事故に立ち返るとともに、昨年12月に新幹線重大インシデントを発生させたことも重く受け止め、改めて安全に対する取組みを振り返り、課題を抽出。「組織全体に安全にかかわる方針が十分に浸透しておらず、潜在するリスクを洗い出すことが不十分」などと説明した上で、「組織としての安全マネジメントをより有効なものとしていくために継続的な改善を図ります」としている。ハード・ソフトからなる鉄道システムの機能向上のため、必要な経営資源も投入していくという。

2018~2022年度の5年間を通じた到達目標として「お客様が死傷する列車事故 ゼロ」「死亡に至る鉄道労災 ゼロ」を掲げ、「お客様が死傷する鉄道人身障害事故」「踏切障害事故」「部内原因による輸送障害」については「安全考動計画 2017」目標値(目標に到達した場合はその数値)のさらに1割減をめざす。おもな取組み内容として「安全最優先の意識の浸透」「組織の安全管理(安全マネジメント)の充実」「一人ひとりの安全考動の実践」「安全を維持する鉄道システムの充実」の4つを挙げ、鉄道システムの機能向上に向けてハード・ソフト両面からアプローチするリスク低減策を策定した。

ハード面では鉄道の安全・安定輸送を実現し続けるため、老朽化した設備の取替えも含めて安全性向上を図る。おもな実施項目として、より安全性の高い新製車両を山陽新幹線や近畿エリア・広島エリアなどに導入する。

  • 山陽新幹線や近畿エリア・広島エリアの在来線で新製車両の導入も(写真は323系)

その他、ロングレール化・PCまくらぎ化をはじめとする線路設備の維持・強化、山陽新幹線などの構造物の健全性維持(トンネル、高架橋や盛土の耐力強化)、保安装置の更新(ATS-P更新)、新幹線運行管理システムの設備更新なども進める。新幹線安全対策(台車の異常を検知する装置の導入)、ホーム・踏切の安全対策(ホーム柵の整備、第3種・第4種踏切道の格上げなど)、新技術による保安度向上(無線式ATCの導入)も実施。重大な労災を防止するため、作業の機械化・システム化を進めるとともに、設備を適切に維持・管理するためのシステムチェンジに向けた投資も行う。

ソフト面では過去の事故・災害とその対策、ルール制定の経緯を体系的に学ぶ教育の実施、鉄道事業を支える基礎である技術の継承や実践的な訓練の継続により、主体的なルール遵守と技術・技能の向上を図る。ヒューマンエラー低減に向け、ヒューマンファクターの観点を取り入れた実践的な教育も実施。ルールだけでは対応できない緊急時などに備え、リスクを具体的に考え、実行する訓練を通じて安全最優先の柔軟な対応力を発揮できる状態もめざす。