通販サイトの関連グッズにも差が

――そうやって作られた防振双眼鏡が、まさかライブや観劇で使われるとは。

家塚:私は、昔から劇団四季の舞台を観に行くときに使っていました。舞台から遠めの上の方の席でも、没入感がすごいんですよ。真剣なシーンで、俳優さんの顔にさーっと涙が流れたりすると「おお……」と、入り込めますね。クラシックコンサートでも、弦がしなっているようすが見えたり、ホッとした顔が見えたり。ですから、ライブや観劇で使われる方の気持ちがわかります。

  • 一番人気だという「10×30 IS II」

島田:我々もここ数年、日本市場で8倍/10倍/12倍の売り上げが増えてきているので調べていくと、口コミで、「ライブを観るにはキヤノンの防振双眼鏡がいいよ」と書いてくださっている人がたくさんいて。それも日本特有なのか通販サイトなどで「この商品を買った人はこのような商品も買っています」というレコメンドの欄を見ると、日本ではアイドルのCDや関連グッズなどで、アメリカだとアウトドア系商品という結果になっています(笑)。

家塚:社内でもアイドルやパフォーマンス・アーティストのファンの方から「私も持っています」「買いました」という声が届いています。女性の若手のデザイナーも持っているというので、「公演中、どのくらい防振双眼鏡で見ているんですか?」と聞いたら、「ほぼ100パーセントです」と答えてくれました(笑)。

――今までオペラグラスは使っていたのですが、「良い双眼鏡を買う」という発想がなく、でもそう言われると欲しくなるので、新しい価値観なのかなと思いました。

島田:SNSが発達して、ネットワークができたことで広まっているのは感じますね。「常にブルーレイを見ているようだ」と言っていただいたりして、ありがたく思っています。ライブでも人数がいっぱいいる中で、バックダンサーとして踊っている方たちを見たい、照明が当たってないところの姿も見たいとなると、防振双眼鏡がいいといってくださっているようです。

家塚:「防振双眼鏡が欲しいのですが、●●くんが『綺麗な俺を見て』と言ってる気が……」というような声もあったようです(笑)。

――かなり、様々な動向を捉えているんですね(笑)

家塚:私の部門でも「私が買った防振双眼鏡を、娘がコンサートで使っているんだよ」と言う人がいます。結構、周囲にもユーザーがいるんですよね。

――そういう声は、開発に取り入れようとしているんですか?

島田:そうですね。だからといって急にライブ専用の製品を開発するのは難しいのですが、今認めていただいている基本性能を守った上で、意見を取り入れていければと思っています。

これまでだと、そういったお客様の声は自分たちで集めないといけなかったのですが、SNSで多くの方が意見を言ってくださっているので、バランスを見ながら、叶えられるものは叶えていきたいと思っています。SNSが発達してきているからこそ、今までとは異なるアプローチの製品開発のやり方もあると考えています。

趣味を広げるきっかけにも?

――実際にお二人もプライベートで使われているということですが。

家塚:防振双眼鏡を一台所有しているのですが、ミュージカル公演を家族と観に行くと、双眼鏡で見たいシーンが家族と重なってしまいます。うーん、やはり防振双眼鏡は人数分持っていなければ……と思いました(笑)。

島田:私もスポーツ観戦に持って行くのですが、「貸してくれ」と取り合いになりますね。スタジアムの広いところから見ると、「今、パスした選手って誰だっけ?」と見たくなるので、ライブだけじゃなくても使っていただければと思います。

――ライブ用で買った方も、応用できますね。

家塚:防振双眼鏡を使うと、ふだん見えていない星も見えるんですよ。東京の明るい空でも、こんなに星があったんだと思えますし、流星群が見えるときも、さすがに流星は追えませんが、流星が現れない時間が充実するのでおすすめです。

島田:双眼鏡を買われる方って、バードウォッチャーにしても、アーティストのファンの方にしても、何かしら特定の趣味で使われている方が多いと思いますが、せっかくだから双眼鏡をいろんな機会に使っていただければ嬉しいです。

※次回は最新の防振双眼鏡について話を伺います。(12月22日掲載予定)