「更年期の症状がプラセンタ点滴で和らいだ」「ビタミンC点滴をしたら肌に透明感が出てきた」……etc.
点滴と言えば、以前は緊急の病気治療に用いられる印象だったが、近年はその捉え方や活用のされ方に大きな変化が出ている。
しかし、病気でもないのに点滴する必要は本当にあるのだろうか? そして、利用するならどんな場合に効果があり、何に注意するべきなのだろうか? ウィメンズヘルスクリニック東京の院長・浜中聡子医師にうかがってみた。
点滴は即効性を感じやすい
点滴の最大のメリットは、体の中に栄養を直接補充することでその効果を実感しやすい点にある。浜中医師のクリニックでも、「高濃度ビタミンC」「プラセンタ点滴」「美肌点滴」「疲労回復点滴」「不定愁訴点滴」「免疫賦活点滴」などのメニューがある。浜中医師は患者の状態を診て判断し、数種類の有効成分をブレンドして提供していると話す。
平均すると30分~1時間程度の短い時間で、肌のケアや体調改善が期待できるそうだが、医師の診断で病名がつかない状態、つまり「疲労回復」や「美容」を目的とした点滴には保険が適用されない。これが病気の治療として行う点滴との最大の違いと言える。
身近な存在となり、即効性があるとなれば「定期的なメンテナンスとして点滴を取り入れたい」と考える人は少なくないはずだ。特に日々を忙しく過ごし、セルフスキンケアに時間がかけられない人ほど、点滴に期待するものは強くなるだろう。しかし、このような考えについて浜中医師は警鐘を鳴らす。
「確かに点滴を救世主のようにとらえる方もいらっしゃいますが、点滴は薬に例えるなら『頓服』のような存在。飲み薬より即効性があるため、いざというときは頼りになりますが、依存するのは避けるべきです」
点滴でその場をしのげても、疲労が積もれば大病を招く恐れもあり、不規則な生活や偏った食生活は生活習慣病にもつながる。
「疲労がたまっているのであれば、その場しのぎの点滴でごまかすのではなく、生活全般を見直し、自身の体を大切にすることが先決」と浜中医師は指摘する。
真の健康は日々の生活の見直しから
疲労回復や美容効果を目的に行う点滴が身近になったことで、保険適用外でも点滴そのものにトライしやすくなったという側面はある。その一方で、必要以上に点滴に頼りすぎるのは危険であり、依存が進むほど自身の生活習慣の改善がおそろかになってしまうという問題も付きまとう。
体質改善や美肌づくりは、食生活を含むライフスタイル全般に気を配らなければならず、時間も忍耐力も要する。手軽で即効性のある点滴に頼りたくなる気持ちもわからなくはないが、成功に近道なし。本当の意味での心身の健康は、日々の積み重ねでしか得られないと覚えておこう。