あえてフルモデルチェンジをしないハイエース

現行型になって13年が経過しているにもかかわらず、フルモデルチェンジではなくマイナーチェンジとしたのも、実は似たような理由からだった。

フルモデルチェンジをすると、多くの部品が切り替わるので、そのたびに自動車整備工場などでは多くの部品を確保しなければならない。モデルチェンジが頻繁に行われると部品の数が増えるし、海外の地方都市などでは新型の部品の供給が行き届かないこともある。しかし、マイナーチェンジに留めておけば、多くの部品が旧型と共通なので、確保がしやすい。壊れてもすぐに直せるから、仕事に支障を及ぼす可能性が少ないことを意味する。

野村氏は「商用車はモデルチェンジしないことも商品力の1つ」と語っていた。乗用車がモデルチェンジをすることで商品力を高めていくのとは対照的だ。ハイエースが乗用車とは全く違う意識で作られていることがわかる。

  • 歴代ハイエースの画像2

    あえてフルモデルチェンジしないのにも理由がある

実は若者にも人気! 乗る人によって表情を変えるクルマ

そんなハイエースであるが、現在はレジャーカーとして選ぶ人も増えており、そこには若者も少なくない。マイナーチェンジ前の販売実績では、装備が充実した上級グレードの「スーパーGL」が4割に達していたそうで、乗用車的な使い方が増えていることがうかがえる。

生活に余裕ができたことも大きいとは思うが、素材として使いこなせて、自分好みにアレンジできる可能性を秘めているところも魅力なのだろう。今年、13年ぶりに日本市場に復活した「ハイラックス」も20~30歳代のユーザーが多いそうで、今の若者がスポーツカーだけでなく、バンやトラックのような使いやすくて頼りがいのある車種にも魅力を感じていることが伝わってくる。

  • ハイラックスの画像

    日本市場で13年ぶりに復活した「ハイラックス」(画像)も若い世代に受けているそうだ

こうした状況を見据えて新型ハイエースでは、ボディやインテリアをファッショナブルにカスタマイズした特別仕様車「リラクベース(Relaxbase)」を用意。さらに、販売を担当するトヨペット店では、ハイエースでアウトドアを楽しむライフスタイルを提案する「ハイエースフィールド」を44店舗に設置予定としている。

  • ハイエースフィールドのイメージ画像

    ハイエースフィールドのイメージ図(画像提供:トヨタ自動車)

人や物を運ぶという本来の目的を世界各地で展開しつつ、レジャーユースという新しい要求にもしっかりと応えていく意志を見せた新型ハイエース。50周年はこのクルマにとっての転換点になるかもしれない。