大井町線では最古参の電車となった8500系。5両編成のため各停専用である

ただ、東急田園都市線、大井町線には1975・1991年に製造された、古い8500系がある。同社の電車の特徴でもある、オールステンレス製の車体であるがゆえ、劣化にも非常に強い。税法上の減価償却期間(電車の場合は13年)もとっくに過ぎている。

この電車も、一時は新型車で完全に置き換える計画が持ち上がった。しかし途中で方針が変わり、長野電鉄や秩父鉄道、あるいはインドネシアへの譲渡車が出たものの、まだ多数、東急に残存しているのだ。全面引退を示唆するような情報は、今はない。

東急としては、もし利用客が減少傾向に入れば、この8500系をクッションとして廃車しつつ、車両数を調整しようという心づもりがあるように思われる。こうした対応策を考えていたため、利用客の増加が見られるうちは、車両増備ができたと思われる。

6020系と前後して、来春には田園都市線に新型車2020系が投入されるが、30両だけ。8500系を完全に置き換えるにはほど遠い。

また、急行の追い越し駅新設のような大規模な設備改良は、車両の増備以上に大きな投資である。設備を増強せずに大井町線の増発がダイヤ上、可能となる目処がついたことが、今回の東急の計画の前提の一つになっている。

各停は5両編成のまま

大井町線は池上線や多摩川線と近接し、開発余地がほとんどない、古くから成熟した住宅地を走っている。駅はこまめに設けられており、生活道路からすぐホームに上がれるような構造の駅も多い。各停だけが停まる中間駅の1日平均の乗降客数は、ここ10年あまりの間、どこも微増と微減を繰り返すだけで、大きな動きはない。こうした点は、池上線が置かれた状況とよく似ている。

大井町線自体の利用客数増加は、ほとんどが田園都市線からの流入と考えてよい。そのため、所要時間が短い急行が増結、増発されるのだ。それゆえ、各停については、これまで通り5両編成で推移する。

むしろ、通勤通学客の利用傾向は、各停にまず現れると考えられる。バイパス線としての賑わいは続くとしても、華やかな急行よりも、沿線住民の動向を表す各停の方に、今後は注視していく必要があるかもしれない。