富裕層のクルマとしても定着、トヨタ「ハリアー」も登場

SUVという位置づけがより明確になってくるのは、1990年代に入ってからだ。米国西海岸の高級住宅地であるビバリーヒルズなどで、レンジローバーに乗る富裕層が出てきた。

富裕層の乗る高級車と言えば、米国なら「キャデラック」、英国なら「ロールスロイス」、あるいはドイツの「メルセデス・ベンツ」、そして高性能スポーツカーなどがあるが、そうした乗用4ドアセダンなどと一味違う見栄えや乗り心地、存在感を見せる車種として、レンジローバーに注目が集まったのではないか。金持ちであることを単に誇示するだけでなく、人となりとして、より行動的で活発であることを示す持ち物と考えられたのだろう。

ジャガー・ランドローバー・ジャパンが2017年7月に受注を開始した「レンジローバー・ヴェラール」

そこに目を付けたのが、トヨタ自動車の「ハリアー」だった。こちらは本格的4輪駆動車からの派生ではなく、中型乗用4ドアセダンとして米国で販売1位をとっている「カムリ」が基になった。4輪駆動車としての能力はそれなりだが、基が乗用車なので、快適性は格段に違った。そこに多くの人が魅力を感じだし、SUVという存在が確立されていったのである。

ラグジュアリークロスオーバーとしてのキャデラック「XT5」

SUVの発想はさらに広がり、本格的4輪駆動車として存在してきたジープのような格好をした車種でありながら、実は4輪駆動ではなく2輪駆動のクルマまで現れるようになる。

そうなると、何をもってSUVと定義するのかが曖昧になってきた。そして、あらゆる要素を1つに融合したクロスオーバー車という呼び名が登場することになる。

定義が曖昧になってきたSUV。キャデラック「XT5」はどのような位置づけになるのか

クロスオーバー車とは、4輪駆動車のようでありながら、乗用車の快適性や、高級さをより備え、日常的な利用にも便利なクルマであるというように、昔ながらの分類を超えて、複合的な魅力を併せ持つクルマだと位置づけられる。

前置きが長くなったが、キャデラック「XT5」は、ラグジュアリークロスオーバーと紹介されるSUVだ。