当時、JAC(現JAE)の新人俳優だった渡洋史は、10年以上にもわたるキャリアと確かな演技力を身につけた大先輩・大葉健二(ギャバン=一条寺烈役)の後を受けての主演抜擢ということで、とてつもないプレッシャーがあったという。渡は撮影当時のことを振り返り、「数えきれないほどたくさんの出来事がありました。その上で、最後になって思ったのは、共に作品を作り上げてきた大勢の仲間と出会えたことそのものが一番思い出深いですね。打ち上げのときに飲んだお酒の美味しさ、そして1年間このメンバーでやってきた、戦ってきたなあっていう安堵感。それらを合わせた、あふれる思い。家族のようないい仲間ができたというところが一番感動した部分です」と、過酷な撮影で苦楽を共にした大勢のスタッフ、キャストとの出会いにあらためて感じ入るところを見せていた。

文字どおり、体当たりで伊賀電を演じきった渡は、当時の芝居について「あのときは19、20歳だったんですけれど、あの自分には嘘がない。偽りがないというか、持っている力をすべて使って、下手なりに頑張ったと思っています」と、発展途上だった若い日の自分を振り返って、当時と変わらぬさわやかな笑顔を浮かべた。

先輩の大葉健二と同じく、演技だけでなく危険なスタント・アクションも自らこなした渡。「もっとも大変だった撮影は?」という問いに対しては、「みんな大変だったのですが、その中であえて一番を挙げると、第19話で吊り橋に両腕でぶらさがったこと。あれはもう奇跡のショットだと思います。今やれと言われても絶対できない!」と、第19話「魔境岬に立つ神秘の少女」で、怪しげな神父(実は魔怪獣カタリベビースト/演:斎藤晴彦)と遭遇したシーンでのエピソードを懐かしそうに語った。

降矢は「私はそもそもアイドル的なキャラではなかったので、視聴者のみなさんが期待するヒロインとしての芝居や表現は、もしかしたらできなかったのかもしれません。でも、スタッフの方たちにあたたかく守られながら、1年間無事に過ごすことができたかな」と、30数年の時を経てもなお気さくに話ができる、かけがえのない仲間との出会いをもたらした『シャリバン』という作品への愛を再確認したと語った。

「撮影で苦労したことは?」という問いに関しては、「苦労もあったとは思うのですが、今となっては楽しい思い出しかない」と、長い年月を経たことで苦労すらもよい思い出に変わってしまったと笑顔で振り返った。そんな中で、特に大変だったことを問われると、「第1話でグランドバースが富士の御殿場に降り立つシーンがあって、そこで私がさわやかに走り抜けなくちゃいけないんですけれど、あそこは岩場なので走りにくくて……。銀色のブーツのカカトを壊したんですよ。そして、なかなかセリフも言えなくて撮り直しになった上に、テレビでは自分のしゃべっているところが全部カットされてしまったんです(笑)」と、記念すべきファーストシーンでの芝居であるのに、散々な目に遭ったことを苦笑まじりに明かした。

『シャリバン』Blu-ray化についての感想を求められた渡は「34年前の作品なのに、いまだに多くの人たちに愛されていることをうれしく思います。Blu-rayのきれいな映像で、あのころの熱い思いを感じていただきたい」と、懐かしい青春の日々が閉じ込められたフィルムが最新の映像技術でよみがえることに喜びを感じ、降矢は「自分にとっても思い出深い作品である『シャリバン』。当時ファンだった方に加えて、若い世代にも観ていただきたい」と、幅広い年代層が視聴してくれることを願っていた。

宇宙刑事シャリバン Blu‐ray BOX 1は、第1話「幻夢」から第18話「夏だ!海だ!伊豆半島を襲うメテオの群」までの18エピソードを収録し、2017年11月8日に発売される。 続くBOX2は第19話「魔境岬に一人立つ神秘の少女」から第35話「倒れたら立ち上がれ電!愛は生命の輝き」までの17エピソードを収録し、2018年1月10日に発売予定。そして最終巻となるBOX3は第36話「風雲の宇宙海にイガ戦士団のZ旗あがる」から第51話「赤射・蒸着」までの16エピソードを収録し、2018年3月7日に発売予定。BOX1は全巻収納BOX付き(初回生産限定)。BOX2とBOX3には「渡洋史・降矢由美子スペシャル対談(前後編)」が映像特典として収録される。

秋田英夫
主に特撮ヒーロー作品や怪獣映画を扱う雑誌などで執筆。これまで『宇宙刑事大全』『宇宙刑事年代記』『メタルヒーロー最強戦士列伝』『ウルトラマン画報』『大人のウルトラマンシリーズ大図鑑』『ゴジラの常識』『仮面ライダー昭和最強伝説』『日本特撮技術大全』『東映スーパー戦隊大全』『ゴーグルV・ダイナマン・バイオマン大全』『鈴村健一・神谷浩史の仮面ラジレンジャー大百科』をはじめとする書籍・ムック・雑誌などに、関係者インタビューおよび作品研究記事を多数掲載

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