1983年にテレビ朝日系全国ネットで放送された特撮テレビドラマ『宇宙刑事シャリバン』が、東映ビデオより待望のBlu-ray BOXとして商品化されることになった。Blu-ray BOXは全3巻で構成され、「BOX1」は2017年11月8日に発売される。

『宇宙刑事シャリバン』とは、その前年(1982年)に放映されていた『宇宙刑事ギャバン』に続く「宇宙刑事シリーズ」の第2弾。『ギャバン』は同時期に好評を博していた「スーパー戦隊」シリーズ(1982年当時は第5作『大戦隊ゴーグルV』を放送)とは別に、東映が打ち出した新しい特撮ヒーロー路線として、大いに期待がかけられていた。

左より女宇宙刑事リリィを演じた降矢由美子と、伊賀電役の渡洋史

この時すでに東映特撮ヒーローの一時代を築いた人気シリーズ『仮面ライダー』は、『仮面ライダースーパー1』(1980年)をもってテレビ放送が終了し、雑誌展開を主な活躍の場とする新企画『仮面ライダーZX(ゼクロス)』として、かろうじてシリーズが継続されていた状態だった。『ギャバン』には「仮面ライダー」や「スーパー戦隊」シリーズとはまったく違う新しいヒーロー像が求められ、その回答として製作スタッフが示したのが、メタリックな輝きを放つ硬質な戦闘用強化服=コンバットスーツなのであった。

銀河連邦警察から地球へ派遣されてきた宇宙刑事ギャバン=一条寺烈は、宇宙犯罪組織マクーの襲撃に立ち向かうため、特殊軽合金グラニウム製のコンバットスーツをわずか0.05秒で「蒸着」する。それまでの等身大ヒーローのほとんどが布製のコスチュームにマスクやプロテクターなど硬質のパーツを装着するパターンだったのに対し、ギャバンのコンバットスーツは頭のてっぺんからつま先まで全身を硬質な装甲で覆い、一見するとロボットのようにも見えるメカニカルな魅力を備えた「等身大ヒーローの革命児」とでもいうべきデザイン、造型が施されている。

また『ギャバン』では、従来の「変身」に代わる言葉として、メッキ技術に用いられる「蒸着」を採用。「蒸着」とは、金属や酸化物などを蒸発させて素材の表面に付着させる処理、または薄膜を形成する方法を指す工業用語で、劇中では「超次元高速機ドルギランから電送された微粒子状の金属が、一条寺烈の体に瞬間的に吹き付けられ、コンバットスーツを形成する」という意味で用いられ、いわゆるヒーローの「変身」シークエンスに科学的説得力をもたらした。

ちなみに、劇中ナレーションで何度も「蒸着せよ!宇宙刑事ギャバン」と語られているように『ギャバン』では意識的に「変身」という言葉を使っていない。「蒸着」はギャバンがコンバットスーツを身に着けるための「かけ声」というレベルを越え、作品世界を象徴するテクニカルタームとして重要視されていた。

今までにない斬新なヒーローを創造しようというスタッフ諸氏の熱意が込められて始まった『宇宙刑事ギャバン』は、テレビ朝日・金曜夜7:30~8:00というゴールデンタイムで放送され、強力な裏番組(日本テレビ系の人気バラエティ『カックラキン大放送!!』やTBS系『野性の王国』など)の向こうを張って善戦し、見事「スーパー戦隊」シリーズと並ぶ子どもたちの人気ヒーローの座を勝ち取ることができた。

『ギャバン』は当初26回(半年)予定で始められたが、番組人気が高まったため延長が決定。最終的に全44話が放送されることになった(1年間の放送なのにエピソード数が少なめなのは、プロ野球中継や特番による放送休止がいくつかあったため)。さらに『ギャバン』の好評を受け、次回作も「宇宙刑事」でいこうという意見が内外から高まったことで、シリーズ第2弾『宇宙刑事シャリバン』の企画が立ち上がった。

ギャバンの母体組織である銀河連邦警察は、全銀河宇宙に宇宙刑事を派遣しているといったスケールの大きな世界観を有しており、『ギャバン』第30、31話ではこの設定を活用して、ギャバンのピンチを救いにビーズ星担当の宇宙刑事アラン(演:宮内洋)がやってくるエピソードが作られたりしたため、ギャバンの後任となる宇宙刑事が新たなヒーローとして登場するのは、ごく自然な流れだったといえるだろう。