14日からチケットの一般発売が開始となった東京国際映画祭(TIFF)。30回目の開催という節目の年でもある今回は、これまでを振り返りつつ、今後の方向性を再確認し、共有し、約束するという意味で、「映画を観る喜びの共有」「映画人たちの交流の促進」「映画の未来の開拓」をビジョンとして掲げている。

上映作品は大きく「コンペティティブ」「ショーケース」「クローズアップ」の3部門に分けられており、いずれも国内外の選りすぐりの作品がラインナップされている。まずは、ショーケース部門に分類されている「特別招待作品」「ワールド・フォーカス」部門で上映される作品を何本かピックアップしてみたい。

オープニング作は、荒川弘原作による累計発行部数7,000万部突破を誇る人気コミックの実写版『鋼の錬金術師』。オープニング作品で邦画が上映されるのは実に10年振りのことであり、日本のコミック原作の映画としてはTIFF史上、初めてとなる。主人公・エドを演ずるはHey! Say! JUMPの山田涼介。主要キャストには他に、本田翼、ディーン・フジオカ、松雪泰子らを迎えている。コミックの実写化企画は原作原理主義者からの攻撃に遭い易いが、『ピンポン』『ICHI』『あしたのジョー』と、コミック実写化でキャリアを積み重ねてきた曽利文彦監督の手腕に期待したい。曽利監督は「TIFF マスタークラス」で開講される「『ハガレン』トークイベント(10月30日19時開始。於:六本木アカデミーヒルズ49F タワーホール)」にも登壇する予定だ。

『鋼の錬金術師』(C)2017 荒川弘/SQUARE ENIX (C)2017 映画「鋼の錬金術師」]
10月25日 19:45上映開始 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 2

オープニングスペシャルとして上映されるのは、日中共同制作のスペクタクル巨編『空海-KU-KAI-』だ。今回の上映は作品全編でなく、特別制作されたフッテージのみ。また招待制となっており、チケット一般発売は予定されていない。監督は『さらば、わが愛/覇王別姫』などの作品で知られるチェン・カイコー。出演は染谷将太、ホアン・シュアン、阿部 寛ら。夢枕獏の小説『沙門空海唐の国にて鬼と宴す』をベースに日中豪華俳優の競演が楽しめる。唐の首都である長安の街をかつてない規模で再現した空前絶後の巨大プロジェクトとして話題となっている本作、ややもすれば深刻な事態を迎えかねない東アジア情勢で、映画が相互理解の一助となるべくという意味でも重要な位置にあると言えるのではないだろうか。

『空海-KU-KAI-』(C)2017 New Classics Media,Kadokawa Corporation,Emperor Motion Pictures,Shengkai Film
10月25日 19:30上映開始 TOHOシネマズ 六本木ヒルズ 9

クロージング作品は、アカデミー賞2部門を受賞し、全世界でスマッシュヒットを記録したドキュメンタリー映画『不都合な真実』の10年振りの続編となる『不都合な真実 2:放置された地球』。ドキュメンタリー映画がTIFFのクロージング作品になるのも初めてのことだ。前作に続き、元アメリカ副大統領アル・ゴアが出演。今回の上映にあわせての来日も予定されている。今年6月、トランプ大統領がパリ協定からの離脱を宣言。地球温暖化を中心とした環境問題への取り組みは、現在、世界規模で大きな岐路に立たされていると言って過言でない中、本作が未曾有の危機から地球を救う防波堤となるか? 「観る」だけでなく、その後の「アクション」にも期待を寄せたくなる一本だ。

『不都合な真実 2:放置された地球』(C)2017 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
11月3日 15:00上映開始 EXシアター六本木