実用性と走りの楽しさ、双方を追求するトヨタ

「トヨタは大衆車を作ろうと生まれた企業であり、多く売ることはトヨタの使命だ。しかし、トヨタでも面白いクルマは作れるという事も示したい。(トヨタ車に乗る)大多数のユーザーは(クルマを)便利な移動手段と考えると思うが、そんな中でもクルマ好きをアピールできる味付けがGRだ。(実用性を求める顧客とクルマ好きの)両方のユーザーを満足させることにチャレンジしたい」。豊田社長が「GR」発表会後の囲み取材で語った言葉だ。

左から3人目が友山プレジデント、4人目が豊田社長。発表会にはTOYOTA GAZOO Racingでドライバーを務める小林可夢偉選手(左端)や中嶋一貴選手(左から2人目)らが駆けつけた

クルマの電動化と知能化が進み、クルマが単なる移動手段としてコモディティ化していくのではとの声も聞かれる中、豊田社長は「クルマって楽しい」という部分にこだわりたいと話す。クルマは誕生から100年の歴史を経て大きな変革期にあるが、乗って楽しいクルマ作りを100年後も続けるため、「今、戦っている」と豊田社長は話す。

“モリゾー”こと豊田社長は発表会後、自らハンドルを握りデモ走行を実施。後輪から白煙を上げつつ華麗なドリフト走行を披露していた

友山プレジデントが発表会の最後に語った、「クルマがどんなにIT化しようと、どんなに電動化しようと、我々にとって大切なことは、ユーザーが乗りたくなる、そして自分で操りたくなる、そういう魅力的なクルマを作り続けること」との言葉も、豊田社長の考えに符合する。つまりトヨタは、多く売れる大衆車も作り、クルマの技術革新にも対応しながら、スポーツモデルによりクルマを走らせる楽しさも追求していきたいとの意向のようだ。これは年間1000万台のクルマを売り、あらゆる車種を扱う大企業ならではの全方位戦略と言える。

スポーツモデルで走る楽しさを追求するトヨタ(写真は「86 GR」)

トヨタは先頃、街ではめったに見かけないピックアップトラックの「ハイラックス」を日本市場で復活させると発表したばかり。ハイラックスも「GR」も、好きな人だけが買うクルマという感じがするが、これらを取りそろえる意義が、世界的な自動車メーカーであるトヨタにはあるということなのだろう。