大腸憩室炎に伴う手術の必要性

手術をする可能性もあるのでしょうか。

患者さんの中には、憩室からの出血を引き起こし下血(肛門からの出血)や血便の症状を起こす方もいらっしゃいます。動脈からの出血が起きた場合や、高齢者や抗凝固剤・抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を内服されている方は大量出血に伴うショック状態となります。そのため、大腸内視鏡検査による止血術や血管造影検査による血管塞栓術を施行し、それでも止血が困難な場合には外科手術による止血、大腸部分切除が必要となることもあります。

また、憩室部位に開いた穴が大きく膿瘍(のうよう)と言われる膿の塊が腹腔内にできるケースがあります。この際にはCTを使用し、腹腔内に針を刺して膿を抜く方法が試みられます。右側の腸管側にできた膿はこの方法で治癒する確率が左側の腸管に比べ高いと言われています。この方法で改善しない場合には手術で膿を取り除く必要があります。そのほか、もともと腸管壁が弱い場合や炎症が強い場合、腸が破裂することがあります。この際には救命のため緊急手術が必要であり人工肛門になることが多いです。

大腸憩室炎になりやすい体質とは

大腸憩室炎になりやすい人や体質はあるのでしょうか。

大腸憩室を持っている方のうち、憩室炎が発生する確率は25%前後と言われています。残りの約75%の方との違いとしては、水分摂取や食物繊維の摂取率の少なさが便秘を引き起こし、憩室に便が詰まりやすい環境を作ることが指摘されています。憩室炎の予防には15~30g/日の食物繊維の摂取が推奨されています。

さらに憩室炎は再発率が高い疾患として知られています。繰り返し炎症を起こした場合、腸が繊維化し狭窄を起こすことがあります。繰り返される憩室炎や、腸が狭窄して便の通過障害を起こした場合は手術の適応となります。

家庭での内服抗菌薬や点滴などの治療で治った方も、腸の炎症が治まったと考えられる4~6週間後には大腸がんなどの他の疾患が隠れていないか、腸管に狭窄がないかを調べるため、注腸検査や大腸内視鏡検査を受けた方がよいでしょう。また、再発を予防するために便を柔らかくする緩下剤や、腸内細菌を整える整腸剤、食物繊維の多い食事や運動をお勧めしています。

※写真と本文は関係ありません

取材協力: 大川原華織(オオカワラ・カオリ)

内科医。En女医会所属。

En女医会とは
150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加している会。さまざまな形でボランティア活動を行うことによって、女性の意識の向上と社会貢献の実現を目指している。会員が持つ医療知識や経験を活かして商品開発を行い、利益の一部を社会貢献に使用。また、健康や美容についてより良い情報を発信し、医療分野での啓発活動を積極的に行う。En女医会HPはこちら。