民放キー5局の10月改編情報が7日、出そろった。タイムシフト(録画)視聴率が発表されるようになって1年弱が経過した中で、各局のタイムテーブルからは、リアルタイム視聴の促進をより図るため、"タテの流れ"を意識した思惑が浮かび上がってくる。
日曜夕方好調のテレ朝がとった策は…
視聴率3冠王をひた走る日本テレビは、好調のゴールデン(19~22時)・プライム(19~23時)の新番組が連続ドラマのみとなった一方、同時間帯3位にとどまる平日午前の情報番組『スッキリ』(毎週月~金曜8:00~ ※『スッキリ!!』から改題)と、フジテレビ『バイキング』の猛追を受ける『ヒルナンデス!』(毎週月~金曜11:55)を大幅にリニューアル。平日デイタイムの流れを改善することで、全日(6~24時)視聴率の底上げを図る。
テレビ東京は、枠移動によって、月曜は19時台から22時台まで『YOUは何しに日本へ?』『世界!ニッポン行きたい人応援団』『世界ナゼそこに?日本人~知られざる波瀾万丈伝~』『未来世紀ジパング』をラインナップ。"日本と世界"がテーマとなる番組を、4時間にわたって編成する。
テレビ朝日は、これまで単発枠だった日曜午後帯の14~15時台に『テンション上がる会? ~地球のことで熱くなれ!~』(時間調整中~14:40)、『ロボット旅 日本一周~タカラモノクダサイ~』というバラエティ2本を投入。老舗の『パネルクイズアタック25』から、定着してきた『路線バスで寄り道の旅』の間を"習慣化"させることで、タテの流れを改善させる。同局の日曜夕方は、直近の今月3日で『路線バスで寄り道の旅』(15:40~16:30)が8.2%、『帰れまサンデー』(16:30~17:30)が9.8%をマークしており、その好調を日テレが盤石の体制を築くゴールデンにつなげたい考えだ。
フジ単発枠はプライム帯で計7時間に
そんな中、苦戦の続くフジテレビは、"ワイド化"を打ち出した。日曜ゴールデンの『フルタチさん』と、21時台のドラマ枠を終了し、単発枠『ニチファミ!』(19:00~21:54)を編成。立本洋之編成センター局次長兼編成部長は、平日ゴールデンで2時間の報道番組『プライムニュース』を成功させたBSフジで編成を長く経験しており、「BS編成をやっていたときから、"大枠化"という世の流れは非常に感じていた」と背景を説明した。
ただ、フジはすでに『金曜プレミアム』(毎週金曜19:57~21:49)、『土曜プレミアム』(毎週土曜21:00~23:10)という単発枠を2つ抱え、それぞれサスペンスドラマ枠、映画枠から発展したものの、現在はほとんどバラエティを編成している状況となっている。これでプライム帯の単発枠は、5局中ダントツとなる合計7時間となり、"習慣化"からは、少し後退している印象だ。
一方で、"ワイド化"は、23時台でも実施し、火曜以外の平日バラエティ番組を10分拡大して40分番組に。23時以降の番組は、テレ朝が60分、日テレが55分(24時台)、TBSも59分(24時台)と、各局そのままプライムの1時間枠にも進出できる放送尺となっており、そうした流れも意識しているものとみられる。
日テレ・TBSの定時スタート、他局は静観
4月改編では、日テレが月曜20時台の『世界まる見え!テレビ特捜部』を、19時56分という"フライングスタート"から、20時ちょうどの"定時スタート"に変更したが、この10月改編では、TBSが20時台と22時台番組を定時スタート化。高梨史憲編成部長は「視聴者に分かりやすくスタート時間を主張する」と狙いを説明するが、日テレは10月で定時スタート番組を増やすことはせず、他局を取材しても静観している状況だった。
また、連続ドラマ枠は、前述の通りフジが日曜21時台、TBSが水曜24時台を廃止する一方、テレ朝は土曜23時台に『土曜ナイトドラマ』(23:05~)を新設。この時間帯は、フジで東海テレビ制作の『オトナの土ドラ』(23:40~)があるが、テレ朝は若年層中心にターゲットを想定しており、文字通り大人世代を狙うフジとは競合しないと判断したようだ。
BSに目を向けると、テレビ東京系列のBSジャパンが、土曜21時台に現代ドラマの連ドラ枠『連続ドラマJ』を新設。第1弾は、浅田次郎原作の『プリズンホテル』と"大人の鑑賞に耐えうるエンタメ作"をラインナップしていく方針で、今年春まで同時間帯で放送されていた『土曜ワイド劇場』のファン層を取り込む狙いもあるとみられる。
なお、フジ制作のプライム帯ドラマは、これで「月9」「木10」の2本のみとなり、4本が制作された2015年1月クールから2年半で半減することになる。
視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区。