一方で、治療という観点から三叉神経痛を考える際、注意してほしい病気があると福島医師は指摘する。それは三叉神経痛とは似て非なる「帯状疱疹(たいじょうほうしん)後神経痛」という病気だ。水ぼうそうなどの皮膚疾患が頭部にできると、それらの皮疹(ひしん)が消失した後も痛みが続く場合あるが、そのようなケースでは帯状疱疹後神経痛が疑われる。

「顔面の三叉神経領域に帯状疱疹ができたため、ピリピリした痛みが出ると考えられています。ただし、帯状疱疹はウイルスが原因であるため、通常の三叉神経痛とは異なり抗ウイルス薬を使えば多くは治ります」

動脈硬化を招かない生活を送る

三叉神経痛は激しい痛みを伴うため、著しくQOLが低下する。早期に治療を開始するのも大切だが、それ以上に重要なのは三叉神経痛にならないための予防だ。

血管が神経を圧迫するタイプの三叉神経痛が中高年によくみられる理由として、その年代は動脈硬化が起きやすいことが挙げられる。動脈硬化性が進行すると、動脈の蛇行・屈曲が強くなり三叉神経起始部での神経の圧迫が生じやすくなると考えられている。すなわち、高血圧や糖尿病、高コレステロールなど、動脈硬化を促す因子があると三叉神経痛の発病リスクが高まるというわけだ。

「電撃が走る」「成人でもじっとしていられない」などと形容されるほどの激痛を体験したくなければ、普段から食事やアルコール、喫煙などに十分に配慮した生活を送るべきだろう。

※写真と本文は関係ありません


記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。