秋の定番商品である月見バーガーに寄せるマックの期待はとても大きい。しかしながら、月見だけでハンバーガー“秋の陣”を制することはできない。わきを固める通常商品の販売も確実にしていく必要がある。

季節商品とレギュラーメニューの両立が鍵だ(画像は「月見バーガー」)

月見のプレス発表と並行して、マックの公式アプリにある変化が見られた。9月6日までの期間限定だが、ビッグマックセットやダブルチーズバーガーなどのクーポンが配信されていたのだ。また、8日までとなっているがてりやきマックバーガーのセットなどのクーポンも見つけた。この辺りからも、集客策と定番商品の訴求が同時に行われていることを感じられる。

一方、月見シリーズを先行販売している店舗では、意外にも月見を注文している顧客は多くなかった。期間と店舗を限定した先行販売のため、まだクーポンが配信されていないことも、理由の1つなのかもしれない。実際に来店客が注文している商品を見ると、やはりクーポン商品が多く目に付いた。

マックの業績を左右する外食産業“冬の陣”

日本マクドナルドホールディングスの発表するセールスレポートによると、2017年度は客数において、5月を除き前年同月比で2桁%の伸びを示している。2017年3月の前年同月比12.2%増は、2016年3月が同5.1%増だったのに対し倍以上の伸び率だ。これは「てりたま」効果によるところも大きいだろうが、ビーフの新商品である「グラン」が集客に一役買ったと見ることもできる。

マックが春の季節商品として押し出す「てりたま」(画像は2017年3月の発表会で撮影)も3月の集客に効果があった様子

6月で比べても、2016年が前年同月比3.3%増だったのに対し、2017年は同13.5%増と大幅に来店客が増えた。同月は「ビッグマック祭り」が行われ、しばらくクーポンから姿を消していたビックマックが値引きとなった。大幅な値引きではなかったものの、やはりビックマックファンの多くは店舗に駆け込んだものと見える。

2016年度は結果的に「マクドナルド復活?」と騒がれたが、戦略的には客数を目指すのか、単価アップを目指すのか軸足が決めきれていない感があった。しかし、2017年度は目指す戦略(方向性)がしっかりしてきたことから、上期は堅調な結果を残すことができたと言えよう。新商品ラッシュという話題性だけを狙うのではなく、今年度は顧客が足を運ぶ価値のある商品展開や販売戦略を着実に実行している印象だ。

2017年12月期も残り4カ月を残すのみ。秋の名物「月見」シリーズの後には、1年の締めくくりとして冬の「グラコロ」も登場を控えている。このままマックが逃げ切るのか、あるいは競合各社が一矢報いる戦いを挑んでくるのか。マックが相手にするのはハンバーガー業界のライバルだけではない。

冬はコンビニ各社が「おでん」に磨きをかけ、中食需要の取り込みを図る一方で、丼チェーン各社はアツアツの「ひとり鍋」と1000円以下の低価格居酒屋業態で集客を図る。ファストフード、その他の外食、コンビニが三つ巴で繰り広げる外食産業“冬の陣”だが、2期連続の経常黒字に向け、マックは存在感を示したいところだ。