「おいしさ向上宣言」でレギュラーメニューにテコ入れ

売り上げ不振店舗の戦略的な閉店など、多くのビジネスリカバリープランを実行に移し、何とか黒字化を達成して2016年度(2016年12月期)決算を終えた日本マクドナルド。今年度は戦略の仕上げとして、「おいしさ向上宣言」と銘打ち、従来は見過ごされがちだった定番商品のテコ入れに力を注いでいる。

今までは、例えて言えば「打ち上げ花火状態」で期間・季節限定商品を繰り出し、1人でも多くの来店客の確保に重点を置いたのがマックの戦略であった。足が遠のいた顧客を呼び戻すため、さらには新たな顧客の来店を促すための戦略が実践されたのだ。

限定商品は「点」としての販売効果を見込めるが、顧客がリピートするには、「面」としての販売戦略が不可欠となる。それが、基幹商品である定番商品の魅力アップである。

基幹商品の強化と店舗体験の向上がマックの戦略の2本柱と言える。2017年に入り、マックがこの戦略に沿って実施した施策は以下の通りだ。

①おいしさ向上と題して1月に「プレミアムローストコーヒー」をリニューアルし、4月には新レギュラーメニューとして本格肉厚ビーフバーガー「グラン」を登場させた

②利便性の向上と題して店舗の改装を進め、従来はコンセプトがバラバラだった店舗展開の再調整に取り組んだ

新レギュラーメニューに加わった「グラン」

店舗体験の向上にも注力

店舗体験の向上を目指した施策の1つがポイントサービスとの連携だ。3月には「dポイント」、6月には「楽天スーパーポイント」が利用可能となった。決済機能の拡充に向けた取り組みも、多くの顧客から支持を得ている。

また、店舗環境の向上という観点で見ると、衛生面の改善は特に顕著であり、定期的にスタッフが環境整備で店内を回っている姿は、飲食店の基本を思い出させてくれるものだ。さらに、細かいところではあるが、カウンター下に位置する荷物置き場の改善も大きなポイント。荷物を床に置きたくない、と寄せられた声に対応したものだが、デイバッグや手提げかばんも楽に置くことができる荷物置き場の高さと幅は、店舗の利便性向上に一役買っている。

店舗リニューアルも最近、こなれてきたようだ。注文場所と受け取り場所の分離は、顧客の動線確保だけでなく、スペースの確保とスタッフの負担軽減にもつながっている。また、店舗立地により、カウンター席を中心とした座席配置を設定したり、可動椅子と固定椅子の配置を工夫したりするなど、顧客の居心地を意識した店舗作りができるようになってきたと感じる。

過日の店舗訪問の際、店員が「店舗体験」について来店客にヒアリングしている姿も見かけた。スマホアプリ「KODO」をはじめ、顧客から集まる膨大なデータを店舗環境の整備に活用する仕組みが整ってきたのだろう。顧客の声を「聞く」仕組みと商品開発や店舗展開などに「活用する」仕組みがうまく回ってこそ、初めてエクスペリエンスの向上につながるわけだ。