おぎやはぎ、劇団ひとりが出演し、挑戦的な企画で人気を博しているテレビ東京系深夜バラエティ『ゴッドタン』(毎週土曜25:45~)。人気企画「芸人マジ歌選手権」では芸人たちが真剣に作った歌を発表し、2007年の開催から10年で14回を数えただけでなく、3月には日本武道館で「マジ歌ライブ2017~マジ武道館~」も行われたという広がりよう。その模様をBlu-ray&DVD化した『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』が16日に発売された。

この日本武道館公演では、「マジ歌」最大とも言えるハプニングが起こった。お笑いコンビ・ハライチが作詞・作曲した「俺たちのミス」を披露する予定だったはずが、澤部佑がインフルエンザにかかってしまい、この大勝負に出演できなくなってしまったのだ。1人残された岩井勇気を救うことになったのは、”坊主つながり”で登場したお笑いコンビ・ラブレターズの塚本直毅。危機の裏側について、当時の状況をテレビ東京 佐久間宣行プロデューサーに聞いた。

1975年福島県いわき市生まれ。早稲田大学商学部を卒業後、1999年テレビ東京に入社。『クイズところ変れば!?』『ペット大集合!ポチたま』『TVチャンピオン』などをへて、『ゴッドタン』『ピラメキーノ』『NEO決戦バラエティ キングちゃん』などを担当。

深夜1時に「インフルエンザ」

――『マジ歌ライブ2017~マジ武道館~』最大のハプニングとして、「ハライチ澤部、インフルエンザでドタキャン」事件の裏側について今日は聞かせてください。澤部さんがインフルエンザとわかったのは、いつだったんですか?

当日の深夜1時くらいですね。その前、0時くらいにハライチのマネージャーから「体調崩してるみたいです」と連絡をもらったときには、澤部がすごく出たがっているのを知ってたから、1曲だけだし出してあげたかったんだけど、1時くらいに「すみません、インフルエンザでした」と。隣りにいた澤部がゴホゴホしながら「すみませぇ~ん……」って言ってました。

ハライチのマネージャーを通してナベプロで空いている人を探してもらいましたけど、何しろ当日なんでなかなか見つからないんですよ。1~2人は空いてたんですが、澤部の代わりとして出てくるのもおかしいなと考えていたときに、「そういえば角田バンドのときにラブレターズが出るから、塚本がいるな」と思い出して。

左から岩井勇気(ハライチ)、塚本直毅(ラブレターズ)

――それで塚本さんと岩井さんで「俺たちのミス」をやることになったんですか?

そのときはまだ、ハライチのパート自体をやめるか、代役を立てるかも決まってなかったんです。一応代役は探すけど、見つかったところで何をやるか決めてなくて、大半のスタッフは「岩井が出てきて、澤部がインフルエンザになったのを笑いにして、トークとコントで終わらせましょうか」となってました。そこから塚本の存在を思い出して、「代役でボウズ連れてきました」と、歌なしのコントはできるな、と。

それで岩井に連絡をしたら「でも、できればやっぱり歌もやりたいですね。澤部の欠席と代役をフリにして」という話になって。だから「そうだよね。じゃあもう1回考えるわ」となったのが、午前2時くらいかな。そこから僕が構成のたたき台をつくって岩井に送りました。翌朝6時くらいに、音が出せるようになって最初のリハの時間をハライチに当てたんです。そこに歌詞を考えて直してきた岩井と、何も知らない塚本が来て。

――塚本さんはよくわかってなかったんですね(笑)。

ラブレターズの入り時間はもともと午後3時くらいだったのに、塚本だけ8時間くらい前倒しになって(笑)、眠い目をこすりながら「どういうことですか?」みたいな感じでしたね。

そこから、歌詞を書いた紙を手に持ってリハが始まりました。歌はプロンプターで多少カンペを出せるけど、しゃべりの部分はスピードと分量的に出せないんですよ。だから「塚本、もうこれを覚えるしかないんだよ」「……はい」と、塚本の長い1日が始まりました。

――今回DVDに収録されている特典映像でも、登場のギリギリまで舞台袖で練習している塚本さんが映ってましたね。

1万人の前でその日覚えたネタをやるなんて、当然やったことないから相当大変だったと思いますよ。僕も聞いたことないですもん。リハの最後にもう一回時間を捻出して、本番2時間くらい前にハライチだけもう一回やったんです。そこで岩井はさすがに結構できてたけど、塚本はまだかなりヤバくて、「これはもしかしたらトチるかもしれないから、そうなっても笑いになるように考えようかな」って思ったんですよ。でも、塚本があまりにも一生懸命やってるから、初めから失敗ありきの笑いにするのも違うかな、と思って2人に任せました。

――本番では、ちゃんとやりきってめちゃくちゃ笑いも取ってましたね。

そうですね。岩井も土壇場でいい歌詞を思いついたし、塚本も本当によくやりました。