ミュージカルスターの台頭も背景に
もう1点、忘れてはいけないのは、ミュージカルスターのドラマ進出だ。その筆頭は、きょう28日スタートの『あいの結婚相談所』で連ドラ初主演を務める山崎育三郎だが、彼とともにミュージカル界のプリンスユニット・StarSとして活動した、井上芳雄と浦井健治の存在も大きい。
彼らは端整なルックスを生かした王道のプリンスから、キザでナルシスト、底抜けにポジティブな男、情熱があふれ出る熱血漢まで、感情や動きの大きい個性的なキャラクターの演技に長けている。また、「個性的なキャラを演じても物語を邪魔しない」というナチュラルさもあり、だからこそ歌って踊るような過剰演出をサラッとこなしてしまうのだ。
朝ドラでもあった、歌って踊る演出
過去に歌って踊る演出が見られた作品にも、歌や踊りの実力者がそろっていた。2012年の『カエルの王女さま』(フジ系)には、天海祐希、福原美穂、大島優子、久野綾希子、濱田マリ、石井竜也。2015年の『表参道高校合唱部』(TBS系)には、劇団四季出身の石丸幹二と堀内敬子、ミュージカル経験の豊富な城田優、神田沙也加、川平慈英。2016年の『ちかえもん』(NHK)では青木崇高、小池徹平、早見あかり、山崎銀之丞、北村有起哉。『ニーチェ先生』(読売テレビ・日本テレビ系)では浦井健治、間宮祥太朗、松井玲奈らが出演。それぞれ歌って踊るシーンだけでなく、声や全身の表現力を生かして、作品のベースやアクセントとなっていた。
その他、歌って踊る演出が見られたドラマで特筆すべきは、2003年の『てるてる家族』(NHK)。老若男女が見る朝ドラにも関わらず、石原さとみ、浅野ゆう子、上原多香子、森口博子らが突然、昭和歌謡を歌って踊るシーンが斬新だった。現在の流れが続いたら、もしかすると再び朝ドラで同じような演出が見られるかもしれない。
■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。