「夜の街へ繰り出そう」――などと言う人は今どきいないかもだが、あえて繰り出すと言うのなら、いわゆる渋谷や新宿は定番過ぎる。これからは、地味なのになぜか味わい深い"夜の商店街"を味わってみてはいかがだろうか。今回は、十条銀座商店街(東京都北区)とその近辺で食べ歩き・飲み歩きグルメを探してみた。

夜の「十条銀座商店街」。昼間には見られない雰囲気がある

意外にも夜が楽しい「十条」

どこの商店街であっても、最も活気を帯びるのは日中だろう。仕事が少し長引いて帰宅すれば、既にシャッター街と化しているところも少なくない。大抵の人はその中を足早に通り過ぎ、家路へと急ぐ。確かに、小さな商店街では数件の居酒屋が開いているだけで面白くもおかしくもないのだが、場所によっては昼間とは違う装いを見せてくれる。十条の商店街はそのひとつだ。

いくつかの店は閉まり、いくつかは物静かに開いている。夜の商店街をさまよう人を待っているかのようだ

十条の商店街の代表格は「十条銀座商店街」だ。一説には「東京の三大銀座のひとつ」などと言われているらしいが、定かではない。しかし、都心からのアクセスの良さ(池袋駅から十条駅までJR埼京線で5分)やにぎわい具合、店舗の老舗度を見る限りは、そう言われてしかるべきと思えなくもない。長さ約350mのアーケードは活気に満ち、そこかしこでお惣菜屋から漂う香りに包まれる。

十条銀座商店街は、更に「富士見銀座商店街」へと続く。軒がたいそう低い店舗が並び、LEDに照らされたゲートとは裏腹に昭和の息遣いを感じるようだ。

歩くほどに古風な「富士見銀座商店街」

商店街の定番はメンチカツにコロッケ、焼き鳥など。徒歩5分程度で通過できてしまうような商店街に、なぜかそれらのお店が何軒もある。値段は10円の破格もあれば、120円程度の通常価格まで。そしてこれらのお店の多くは閉店時間が20~22時と遅い。ただし、大体が「売り切れ次第終了」なので注意したい。

メンチカツ&コロッケ

まずは、肉の「塩家」の店頭販売から。メンチカツは通常価格120円だが、毎日行うタイムサービスの時は100円。サクサクの衣の中は肉がたっぷり詰まっていてボリューミー。

メンチカツ(120円)。お仕事帰りのお腹を満たすのにぴったり

カレーコロッケ(90円)。どちらもサクサクのあつあつだ

1個10円のチキンボール!

行列のできる店「鳥大」には名物がある。1個10円のチキンボールだ。そのほか、メンチカツ、唐揚げ、焼き鳥、ローストチキンや、串揚げが山盛りになった500円パックなどが並び、見ているだけでも楽しい。

夜はアジアの屋台のような雰囲気。いつまでも人がやってくる

チキンボール(税別10円/1個)。鳥のひき肉を揚げたもので、意外とさっぱり

メンチ(税別120円)。「メンチカツらしからぬ風味が!?」と思ったら、鶏肉のメンチだった。「鳥大」という店名なのだから当然だ

更に鶏肉

なぜかこの商店街は鶏系のお店が多い気がするのだが、ともかく焼き鳥も味わっておきたい。「いちどり」の人気商品は「つくね串」や「ももねぎ串」とのこと。焼きたてではないのがもったいないところだが、冷えていても筆者的にはかなり美味だった。

左がももねぎ串(113円)、右は日替わりで特売となっていた青じそつくね串(95円)

「たこせん」って何!?

十条銀座商店街の横道は、どういうわけか真っ暗である。商店街が明るいからそう思えるのかもしれないが、現代にあるまじき暗さだ。そんな道に誘われて入っていくと、たこ焼き屋「イワタコ」を見つけた。「平日限定」と書かれている「たこせん」なるものを、取材日は土曜日だったにも関わらず頼んでみた。

平日限定のたこせん(130円)。えびせんにたこ焼き2個が挟まっていて、つぶして食べる。店長さんは「最初は平日だけと思ったんだけど、結構いつでも大丈夫!」と笑う。アバウトである

見知らぬ商店街で生ビール歩き飲み、というのもオツではないだろうか。というよりも、これだけ肉やらたこ焼きやらを食べたら喉も渇く。続いては、立ち飲み&歩き飲みができるお店を紹介しよう。