今年の夏休み、どこに行こうか悩んでいる人もいるのではないだろうか。大人数での旅行を考えているなら、景気のいい大皿料理がおいしい愛媛県を国内旅行の選択肢としてオススメしたい。今回はそんな愛媛県の中でも、食材が豊富な南予地方のご当地料理を紹介しよう。

愛媛県・南予地方のハッピーな郷土料理とは

ランチは新グルメ「とんくりまぶし」で決まり

まずはランチにオススメの丼料理を紹介。愛媛県南西の大洲市で味わえる「とんくりまぶし」は、栗と豚肉をぜいたくに使ったご当地グルメだ。栗焼酎で甘辛く炊き上げた豚バラ肉と栗がご飯に合う。

「分油屋(わけあぶらや)」の「とんくりまぶし」(1,100円)

「ひつまぶし」のように食べ方を変えながら味わえるのが特徴で、最初はそのまま、次は薬味を入れて、最後はだしをかけて、と3段構えで楽しめる。だしはブラックペッパーの香りを効かせたちょっと変わった風味で、甘辛い味付けの具材に対してアクセントになっている。

お椀にとりながら、薬味を入れて食べたり

だしをかけて食べたりと、「ひつまぶし」のように楽しめる

「とんくりまぶし」は新しい料理で、開発されたのは2013年。温泉施設「鹿野川荘」の料理長が考案したものだという。地元産の豚肉に加え、大洲市が県内トップの生産量を誇る栗を使うなど、とことん地元産にこだわった一品だ。

「とんくりまぶし」を提供している飲食店はいくつかあるが、筆者は大洲まちの駅「あさもや」内の「分油屋(わけあぶらや)」(愛媛県大洲市)でいただいた。提供店によって味わいが異なるのも特徴だそうだ。

「分油屋(わけあぶらや)」(愛媛県大洲市)

ハッピーな色の「ふくめん」は酒に合う

瀬戸内海や豊予海峡といった、海産物の豊富な海に囲まれているのも愛媛県の魅力。隣接する高知県は大皿に盛った「皿鉢料理(さわちりょうり)」で有名だが、愛媛県・南予地方の"ハレ"の料理にも大皿を使ったものが多い。それもやたらと縁起が良さそうな料理が多い。

そんな郷土料理を地酒と共に楽しめる宇和島市の料理店「ほづみ亭」から、いくつかの品を紹介しよう。

宇和島市の「ほづみ亭」。川のそばに建つ風情あるたたずまい

まずオーダーしたのは「ふくめん」(650円)。類を見ない色使いがとにかく目を引く料理だ。ルーレットのようにきっちり4つに分かれた鮮やかなピンクに黄色に緑に白!

カラフルな「ふくめん」(650円)。これで約10人前

緑だけは一目でネギだとわかったが、他の食材は何なのかよくわからない。聞けば、黄色はユズの皮、白とピンクは白身魚のそぼろだそうだ。紅白の色使いで縁起もいい。

「ふくめん」の下にはこんにゃくの千切りが隠れており、天地をひっくり返すように豪快に混ぜて食べる。混ぜると色味はちょっとぼやけるが、そぼろのほのかな甘味と旨味、こんにゃくとネギの食感のメリハリ、さわやかなユズの香りを一度に楽しめ、つまみにも前菜にもうってつけの味わいだった。「ふくめん」と地酒だけで2時間はイケる。

下にはこんにゃくの千切りが。大胆に混ぜて食べるのだ

ちなみに、日本酒では「城川郷」(本醸造2,800円・吟醸3,500円/共に720ml)、焼酎では栗焼酎の「くり媛囃子」(4,800円)が筆者のオススメだ。

「城川郷」(本醸造2,800円・吟醸3,500円/共に720ml)

栗焼酎「くり媛囃子」(4,800円)

めでたい! 鯛料理3連発

さらに「ほづみ亭」から、愛媛県が全国1位の生産量を誇る鯛を使った料理を3品紹介しよう。

ぜひとも食べておきたい一品が「鯛そうめん」(1,500円)だ。まるごと一尾を姿煮にした鯛を大量のそうめんの上に乗せ、ネギや錦糸卵といった色とりどりの具材を波のようにあしらった、目にも楽しい豪快な一皿。

「鯛そうめん」(1,500円)。写真は約10人前

見た目からして大変めでたい料理だが、やはり縁起物として結婚式などでも供されることが多いそうだ。甘めに煮付けた鯛に、こちらも甘めに仕上げためんつゆが、サッパリしたそうめんとよく合う。

さらに、〆のご飯にオススメなのが、「宇和島鯛めし」と「宇和島さつまめし」(共に950円)だ。「宇和島鯛めし」は、鯛を炊き込んで作る「鯛めし」とは趣の異なる料理。だし汁・卵・醤油・みりん・ノリなどをがっと混ぜ、鯛の刺身と共にご飯にのせてかきこむように食べる、豪華版の卵かけご飯という感じだ。その発祥は"漁師飯"とも"海賊飯"とも言われ、船の上で火を使うことなく、釣り上げたばかりの新鮮な魚を食べるために編み出された料理だという。

「宇和島鯛めし」(950円)

「宇和島さつまめし」は、「さつま汁(伊予さつま、佐妻汁とも)」と呼ばれる汁をご飯にかけて食べる郷土料理だ。さつま汁は、鯛のすり身とだし汁、味噌で作る。薬味としてキュウリやネギ、ユズ皮を加えれば、茶碗一杯分くらいはスルスルとをたいらげられてしまう爽やかな口当たりに。

「宇和島さつまめし」(950円)


海の幸にも山の幸にも恵まれた愛媛県。特に南予地方は第一次残業が盛んで、自然に囲まれた生活からか、人柄もおおらかな人が多いという。豊かな自然とあたたかな人々に触れ、美味しい料理を味わってリフレッシュしてみてはいかがだろう。

取材協力: 愛媛県、南予広域連携観光交流推進協議会

※価格は全て税別・1人前