東京都世田谷区は6月1日、平成29年4月時点の待機児童数を発表した。前年度は全国で最も多い1,198名の待機児童数を出していた同区。今年度は337名減の861名となった。6年ぶりに前年度の数値を下回った一方、同区の保坂展人区長は「待機児童が相当数いる現実は変わらない」とコメントしている。

「保育定員数と待機児童数の推移」(世田谷区「保育待機児童対策の状況について」より引用)

同区は平成28年度中に、認可保育園21カ所(分園含む)、小規模保育事業2カ所、認定こども園1カ所、認証保育所1カ所を新設したほか、認可外保育施設の定員拡充に取り組み、前年度と比べ1,959名の定員増を実現。その結果、平成29年4月入園の申込者数は前年に比べて241名増加(6,680名)したものの、待機児童数は前年度比337名減の861名となった。

記者会見での保坂区長の説明によれば、世田谷区では一般会計予算のうち1割以上を保育園関係の費用に割いているとのこと。その中で、土地代を助成するなど、あらゆる手段で保育園を増やしている一方、「物理的に無限にできるわけではない」とも述べている。

保坂区長は、「子どもを育てながら仕事も継続できる新たな働き方を、雇用者側が作り上げる時期にきているのではないか。その点に関して、政府の取り組みは極めて弱い」と課題を指摘。

「子どもを持っているお父さんお母さんが、子どもと一緒に食事をすることができ、語らえるライフスタイルが世界各国では当たり前になっているが、日本にはない。これから先の議論をしっかりやってもらいたい」と国に要望した。

また、政府が待機児童ゼロの実現目標を2020年度に先送りしたことについては、「女性が育児のために仕事を辞めないといけないという状況を、できるだけ回避していくという社会の流れがあり、待機児童対策に取り組んできたが、なかなか追いついていないほどのニーズが生まれてきている。政府全体が(待機児童ゼロの目標を)3年間先送りせざるを得なかったというのは、その状況の表れだと思います」と言及している。

同区は待機児童の多い低年齢児(0~2歳)を対象とする認可保育園分園、小規模保育事業、認証保育所の整備をより一層促進するなどして、平成30年4月に向け、さらに約1,650名分の保育定員に拡充に取り組むとしている。

平成30年4月に向けて、さらに約1,650名分の保育定員に拡充に取り組む(世田谷区「保育待機児童対策の状況について」より引用)