営業利益2兆円がトヨタの実力?

今回の決算発表会見は、異例ともいえるものだった。それというのも、円高トレンドにあった豊田章男社長体制8年目の節目において、本業の儲けを示す営業利益で1兆9943億円を確保したことについて、「今回の決算は、為替の追い風も向かい風もない中で、まさに現在の等身大の実力が素直に表れたものだと感じている」と章男社長が述べたからだ。

2009年6月にトヨタ社長に就任した豊田章男氏は、言わずもがなのトヨタ創業家の嫡流。2008年秋のリーマンショックによる赤字転落、米国でのリコール対応など「嵐の中での船出」だったが、これを乗り越えて、従来でいう4期8年を経過したことになる。

もうすぐ社長就任から9年目を迎える章男社長は、自信をもって長期政権に臨むと同時に、自動車大転換期へのトヨタ特有の危機感を強め、グループ全体の競争力を磨いていく方針だ。

2017年4月からの経営陣の刷新にも、章男社長の意思が込められる。取締役を9名に絞り、各カンパニーの執行責任と権限を明確化したことには、それぞれのカンパニーにスピード感を求めたいという社長の意思が表れている。

章男社長の変身か

決算発表会見の冒頭で、トヨタが変わろうとする決意を表明した章男社長。会見の席上、社長の両隣に並んだのは、永田理新副社長(CFO)と村上晃彦新専務(渉外・広報本部長)という、決算会見に初めて臨む顔ぶれだった。

左から村上晃彦新専務、豊田社長、永田理新副社長

注目されたのは、決算説明後の質疑応答で主体的に応えたのが、章男社長ではなく永田新副社長だったこと。永田副社長は、米国駐在から日本本社に帰任しての副社長昇格で、CFOとして財務・経理を統括する。かつては渉外・広報副本部長も務めたが、これまでのように経理・財務畑からCFOに就任したわけではなく、章男社長による抜擢といわれる。決算会見の質疑応答でも、記者側の質問に対し、社長を差し置いて「僭越ながら」と主体的に応えていたのが印象的だった。

これは、章男社長による意図的な段取りだったかのようにも受け止められた。つまり、トヨタといえば社長の発言がすべてというイメージを変えて、これからのトヨタを支える経営人材を育成するという方向を表に出してきたように見える。

また、2017年4月に副会長に昇格し、経団連副会長に就任する予定の早川茂渉外・広報本部長の後任となった村上専務は、資本提携先のスバルの役員として3年間転出し、スバルの経営を経験して4月に帰任したばかりだ。つまり、豊田章男体制を支える新たな人材の登用というわけなのだ。