現在放送中のNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』(NHK総合ほか 毎週日曜 20:00~)に出演中の俳優・高橋一生。彼が演じる小野正次は、柴咲コウ演じる主人公・井伊直虎の幼なじみで、許嫁だった井伊直親(三浦春馬)を失った悲しみを乗り越え城主として生きることを選んだ彼女の人生に深く関わってくる人物だ。その甘いマスクと確かな演技力から"一生さま"と呼ばれ、今や時の人とも言える彼が役への思い、そして今の心境を語った。

高橋一生

――今回演じられている政次についてはどう思いますか?

あんまり僕が「政次はこうだ」と言葉に出してしまうと、見てくださっている方々の邪魔をしてしまうのではないかと思っていて。あくまでお芝居を見て「あぁ、あの時のセリフや動きはああいうことだったのか」と感じてもらいたい、というのが正直な気持ちです。ただ、政次って、あれだけ頭がいいのに、おとわ(直虎の幼名)に対してだけは考える前に行動に出てしまうんです。そこにすごく人間らしさを感じます。

大河ドラマのすごいところは、いろいろな見地に立つことが出来るというか、登場するそれぞれの人がそれぞれに大事なものや人を守ろうとしているんです。そう考えると、人間ってとっても業の深い生き物なんだと思いますし、いろいろな思いを抱え、表裏を使い分けて複雑な人間に仕上がってしまう政次には「頑張っていこう」と優しい声をかけてあげたいです(笑)。

――直虎役の柴咲コウさんとの共演はいかがでしょう。

僕はお芝居ってセリフの応酬ではないと思っていて、言葉の間や呼吸を一番大事にしていたいんです。お芝居って、どこまでいっても"ごっこ遊び"だと思う方もいるかもしれませんけれど、そうじゃない瞬間を求めて芝居をするのが俳優だと思っているので。これまで演じて来て、そういう瞬間が柴咲さんとの間には確かにあった気がしています。

――これから先、政次と直虎の関係性がますます気になるところですが、高橋さんとしてはどのように演じていこうと思っていますか。

僕だけの感覚かもしれないですけれど、コウさんは最初の頃、僕の芝居をすごく細かく見てくださっていたと思うのですが、いつからかそこに"迷い"がなくなったというか。「政次は大丈夫」という気持ちが彼女の目にすごく表れているから、たとえ僕がセリフで本意と真逆なことを言ったとしても、しっかり受け止めてくださっている気がするんです。それはやっぱり半年間一緒にやって来た"つながり"が大きいと思うし、これから先もそれを大事にしながら直虎との関係性を深めていけたらと思います。

――ところで、これまで出演された作品を見る限り、高橋さんというと、どんな役でも器用にこなすというイメージがあります。

そうですか? なぜか器用に見られるんですけれど、あんまりそうじゃないと自分では思っていて。そもそも自分の中にあるものしか表現できないというか、いきなり誰か別の人格にジャンプすることってできないんです。役をいただいた時も、自分との共通点を見つけてからアプローチするのではなく、最初から「これは僕だ」と思いながら没入していくんです。僕が演じる姿を見ていろいろなイメージを持ってもらったり、いろいろな風に思って解釈してくれたりすることは俳優冥利に尽きます。

――大胆なヌードで女性誌の表紙を飾るなど、巷では"一生さま"ブームが巻き起こっていますが、自身ではどう受け止めていますか?

みなさんがもし、あれを生身の高橋一生だと思ってくださっているなら、それはそれでいいかなと思っています。(自分の中で)相反するものを面白がっているというよりも、もっと受け身かもしれないです。今、いろいろなお話をいただいて、やれることはやっておこう、という精神です(笑)。いただけるお仕事に関しては、せっかくなので出来るだけ前向きに考えたいですし、それを見たみなさんが自由に思ってくださっていいと思っています。「これを高橋一生にやらせてみよう」と思ってくださる人がいる以上、出来る限り何でもやりたいのが僕の今の心境です。

『おんな城主 直虎』第18回(5月7日放送)あらすじ

直虎(柴咲コウ)が秘かに作らせていた「種子島」を奪った政次(高橋一生)は、今川への謀反の疑いを直虎にかけ、虎松(寺田心)の後見を降りるようせまる。観念した直虎は後見を譲ることを約束し、政次とともに駿府へ向かうが、銭の匂いを嗅ぎつけた方久(ムロツヨシ)は駿府の今川館へ先回り。今川氏真(尾上松也)に「種子島」を売りつけることに成功する。