東武鉄道は2日、SL「大樹」の拠点となる下今市機関区の開設式を実施した。日光線下今市駅構内に新設され、蒸気機関車の日常の点検を行う下今市SL機関庫と転車台を設置。見学エリアも整備される。開設式では日光・鬼怒川地区限定で着用する新制服がお披露目されたほか、SL「大樹」に使用される客車3両の車内も公開された。

東武日光線下今市駅構内でSL「大樹」がお披露目され、多くの報道関係者らが集まった(※写真全49枚)

SL「大樹」はJR北海道から借り受けた蒸気機関車C11形207号機と車掌車1両、客車3両、ディーゼル機関車(DE10形1099号機)の編成で、8月10日から鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉間での営業運転開始を予定している。南栗橋車両管区での整備を終えたC11形207号機をはじめ、各車両が下今市機関区に到着しており、日光・鬼怒川地区で初めてSL「大樹」を披露することを目的に、今回の開設式が実施されることになったという。

開設式には東武鉄道取締役社長の根津嘉澄氏、日光市長の斎藤文夫氏、「大樹」の文字を揮毫(きごう)した書道家で日光観光大使の涼風花さんらが出席した。根津氏は挨拶の中で、下今市機関区について「SL大樹のベース基地となるとともに、転車台広場として整備し、SLのしくみや歴史などに親しんでいただける新たな観光スポットにしたいと考えています」と説明。各車両そろったことで「いよいよ鬼怒川線での試運転や乗務員の習熟運転が始まります。SL大樹が日光・鬼怒川エリアを国際観光地へ発展させる原動力となり、地域になくてはならない観光資源に成長していくことを願っています」と述べた。

続いて出席者によるテープカットが行われ、今市中学校吹奏楽部(約30名)が「銀河鉄道999」「いい日旅立ち」など4曲を演奏。涼風花さんによる書道パフォーマンスも行われた。涼風花さんは自ら揮毫した「大樹」について、「私の地元、日光・鬼怒川を走るSLの名前を書けるのは本当に光栄なことで、期待に応えたいという思いで寝る間も惜しんで向き合ってきた作品。名前通りにこの地域の"大樹"として根を張り、地域の皆さん、観光で来る皆さんを楽しませる列車となってくれることを期待しています」と話した。

下今市機関区の開設式は記念のヘッドマークを掲げたC11形207号機・DE10形1099号機を前に実施された。地元中学生による吹奏楽の演奏も

ヘッドマークの文字を揮毫した涼風花さんによる書道パフォーマンスの後、日光・鬼怒川地区限定の新制服がお披露目された

開設式でお披露目された新制服は「昭和レトロ・ノスタルジー」を基本コンセプトとしており、駅・車掌関係の制服は高級感をイメージさせる黒色・金色のデザインに。機関士・機関助士らの制服は「ナッパ服」をベースに東武鉄道の社紋を配し、オリジナリティを表現した。SL「大樹」がデビューする8月10日から新制服に変更される予定で、駅関係従業員の新制服は日光線合戦場~東武日光間の各駅と鬼怒川線全駅が対象となる。

開設式の後、SL「大樹」の蒸気機関車C11形207号機、ディーゼル機関車DE10形1099号機の入換作業が行われ、下今市駅構内に展示された車掌車1両・客車3両の前後に連結。営業運転と同じ編成となっての撮影が行われた。

下今市駅では駅舎リニューアルやSL機関庫・転車台の設置など改修が進む

下今市機関区の開設式の後、転車台を使っての入換作業が行われた

C11形207号機・DE10形1099号機が連結されたSL「大樹」。下今市駅に停車中の特急「リバティ会津」「リバティけごん」と並ぶ

SL「大樹」に使用される客車は、JR四国から譲渡された計6両(スハフ14-1・スハフ14-5・オハフ15-1・オハ14-1・オロ12-5・オロ12-10)。今回はスハフ14-1・オハ14-1・オハフ15-1の3両が展示され、車内も公開された。SL復活運転プロジェクトの目的のひとつ「鉄道産業文化遺産の保存・活用」の実現のため、客車においても座席シートやカーテンをはじめ、新製当時に極力近づけたリニューアルを行ったという。車内の様子を撮影する報道関係者からも、14系客車が全盛だった時代を懐かしむ声が聞かれた。

下今市駅ではSL「大樹」の営業運転開始に向け、駅舎リニューアルや下今市SL機関庫の新設、JR西日本から譲渡された転車台(国鉄時代に長門市駅で使用)の設置など、全面的な改修が進められている。SLの雄姿や整備の様子などを間近で見学できる転車台広場、SLをより楽しむためのSL展示館なども整備されるという。駅舎もSLが走っていた時代をほうふつとさせる「昭和レトロ感」のある建物に生まれ変わり、一部供用開始されている。下今市駅の改修完成予定は7月頃とされている。

SL「大樹」は今後、8月10日の営業運転開始に向け、今月をめどに鬼怒川線で試運転を開始する予定。2017年度は土休日を中心に98日間運転される。1日あたり下り(下今市発鬼怒川温泉行)3本・上り(鬼怒川温泉発下今市行)3本設定され、各列車とも下今市駅で都心方面の列車(特急スペーシア・特急リバティなど)や東武日光駅への列車と接続を図る。SL「大樹」は全座席指定とされ、SL座席指定券は7月10日から東武線各駅(駅員無配置駅など一部の駅を除く)と東武トップツアーズ、主要旅行会社にて販売開始される。

SL「大樹」客車(スハフ14-1・オハ14-1・オハフ15-1)の外観・車内