番宣優先でファンサービスが置き去りに
番組祭り特番と言えば、かつては『オールスター感謝祭』のようなクイズ形式が主流だったが、今春は日テレの人気番組リレー、フジのトークショーと三者三様。なかでも、日テレが最もウケているが、視聴率が好調で各番組にファンが多いのだから当然と言える。つまり、今の日テレなら、相当的外れな番組祭り特番を放送しない限り、一定以上の成功を収められるだろう。
一方、TBSとフジは現代の視聴者に向けて、どんな形を模索していくべきなのだろうか。
まず「なぜ番組祭り特番を放送するのか?」という原点に立ち返りたい。そもそも番組祭り特番の主な目的は、"ファンサービス"と"新番組の番宣"の2点だった。かつては視聴者に、人気番組の出演者が共演するワクワク感や、対抗戦で好きな番組を応援する楽しみを与えていたが、最近は視聴率の低下や予算減でスケールダウン。新番組の番宣が全面に押し出されたものとなり、ファンサービスの割合が減っている。
やや厳しい見方になるが、「新番組の番宣番組をしているだけで、本物の番組祭り特番が行われていない」のではないか。たとえばフジは、『ホンマでっか!?TV』の明石家さんま、『とんねるずのみなさんのおかげでした』のとんねるず、『ダウンタウンなう』のダウンタウン、『痛快TVスカッとジャパン』の内村光良、『めちゃ×2イケてるッ!』のナインティナイン、『ネプリーグ』のネプチューンが集い、番組対抗戦を行えば、おのずとファンサービスとなり、視聴率を集められるだろう。言わば、『笑っていいとも!グランドフィナーレ』のようなスペシャル感を醸し出せるのだが、それが実現できないところに現在のテレビが抱える問題がある。
お祭り風ではなく"本物のお祭りさわぎ"を
現代の視聴者は、「愛着のない新番組の番宣を押し付けられたくない」という気持ちが強い。特にドラマの番宣は、朝から夕方の情報番組から夜のバラエティ番組まで、多くの番組で行われるだけに「お腹いっぱい」の心境なのだ。
それだけに番組祭り特番は、「既存番組のファンサービス第一」というスタンスが重要であり、「新番組の番宣はメイン企画から外す」くらいの英断が求められているのではないか。ビジネスの香りが漂う"お祭り風"ではなく、本物の"お祭りさわぎ"を見たいと思っている視聴者は少なくない気がする。
最後にふれておきたいのは、テレビマンが最も頭の痛い話。番組祭り特番に陰りが見られるようになった最大の理由は、「視聴者が愛着を持つ番組が少なくなった」からだろう。魅力を感じる番組が少なければ、番組祭り特番を見ようと思えないのは当然。日々のレギュラー放送で「いかに魅力を感じさせ、ファンを獲得していくか」、その重要性をあらためて考えさせられる。
視聴率の数字は、ビデオリサーチ調べ・関東地区。
■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などに出演。取材歴2,000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。