本書には「休めない」と思いこみ、連日のように激務に耐える汐街コナ氏に、職場の優しい先輩から「大丈夫ですよ 俺がやらねば誰かやるですよ」「会社ってそーゆーもんです」と声をかけられ、驚くくだりがある。筆者もハッとした。そうなのだ。本来は、会社員のほうが休めて、筆者のようなすべて自己責任のフリーランスこそ休めないのだ。

フリーは基本、仕事はワンチャンス。病気でダウンしたり、事故に遭ったりしたら、やりかけの仕事はポシャり、へたをすれば賠償請求される危険だってある。休んでいる間は当然、収入はストップ。築き上げてきた信頼も取引先も失う。

だが会社員だったら、誰かしら代わりにやる人がいる。原則、休んでいる間も基本給は出るし、仕事場も確保されている。会社員は、たとえ自分が休むことになっても、すべてパーではなく、「最低限のセーフティネットは張られている」という安心感を常に自覚しているべきではないだろうか。

飽くなき競争の先にあるものとは

つい先日、大手宅配企業が当日の再配達締め切り時刻の変更や、勤務終了からのインターバル制度の確立を目指すことを表明。今回の決定は、「社員が働きやすい環境を構築」することが目的だそうだが、つまるところ従業員の疲弊が限界に達していたのだろう。

宅配サービスに代表される日本の消費者最優先の質の高いきめ細やかなサービスは、その担い手の過重労働によって支えられている側面もある。ワーク・ライフ・バランスの重要性が叫ばれて久しいが、日本人の働き方を再考せざるをえない転換期に我々は今、突入している。

過労死や過労による自殺がなくならない最大の理由は、「便利さ」「安さ」「速さ」の飽くなき競争にあると思う。それによって、私たちは本当に幸せになっているのだろうか。もうすべてが十分に「便利すぎ」で「安すぎ」で「速すぎ」に感じているのは筆者だけではないはずだ――。