県内最古の農家建築を経て金勝山登山へ

堂平山の山頂には、かつて国立天文台の堂平観測所として使われていた施設が今もあり、現在は、「堂平天文台 星と緑の創造センター」という宿泊もできるレクリエーション施設になっているそうだ。

官ノ倉山頂上付近からは、笠山(837m)と堂平山(875m)が並んで見える

官ノ倉山の頂上から5分ほど下った所で道が分かれるが、ここで外秩父七峰縦走ハイキングコースとはお別れ。道標が「東武竹沢駅・天王沼」と示す方へ下っていけば、15分ほどで天王沼という溜め池のほとりに到着する。

天王沼。まるで高原にでも来たかのような風景

天王沼から三光神社の分かれ道を左に進み、道なりに20分ほど行くと、江戸時代の享保年間(1716~1735)に建てられ、国の重要文化財にも指定されている「吉田家住宅」がある。この建物は江戸時代の典型的な農家建築で、建築された年代が分かるものとしては県内最古という。ここから200mほど歩き、国道とJR八高線の踏切を渡れば、金勝山の南登山道入口に到着する。

金勝山の南登山口

金勝山は、先ほど登った石尊山、官ノ倉山と比べて標高が低く、また、南登山道は距離も短く歩きやすい。登山道を上る内に、頂上付近に建つ「小川げんきプラザ」のプラネタリウムの銀色に光るドームが次第に大きく見えてくる。木立の向こうに見えるその姿は、まるで宇宙ステーションに停泊中のUFOのようだ。山の中腹に広がる果樹園の梅などを見ながらゆっくり歩いても、登山口からわずか15分ほどで小川げんきプラザに到着する。

プラネタリウムの無料公開も

小川げんきプラザは、宿泊施設も備えた自然体験をメインとする県立の社会教育施設だ。同様の施設は県内に6つあるが、小川と名栗(なぐり)のげんきプラザには、プラネタリウム館があるのが大きな特徴。小川では、冬期には天体観測のイベントも実施するなど、「星との出会い」もキャッチフレーズにしている。

小川げんきプラザのプラネタリウムの銀色のドームが次第に大きく見えてくる

小川げんきプラザは、昭和46(1971)年に開館し、かつては「小川少年自然の家」という名称で、子ども達の林間学校やボーイスカウトなどの活動の場としての利用がほとんどだったが、現在は企業の研修など、大人だけでの利用も可能という。また、同施設ではさまざまなイベントも開催しており、2016年9月には、"有機の里"として全国的に知られている小川町下里地区のオーガニック農業と音楽を組み合わせた「小川町オーガニックフェス」を開催し、およそ4,000人の観客を動員したという(主催は外部の実行委員会)。

さて、小川げんきプラザを訪れたなら、やはりプラネタリウムはぜひとも視聴したい。現在、子ども向けのものから大人も楽しめるものまで、計9本の放映用番組を用意しており、土日祝日及び春休みと夏休みの期間に、午前、午後、1日2回の放映を行っている。

プラネタリウムの機械は日々進化しており、室内中央の機械は二世代前のもので、現在は使用してないという

1回の放映時間はおよそ1時間で、2~3本の番組を組み合わせて放映するという。投影は10:30~と14:00~の1日2回となる。2017年の春休みは3月25日~4月9日まで、休所日を除いて放映する予定。このうち4月1日~9日までは、春休み特別企画として無料公開を実施するそうだ。

日帰りの利用なら予約も必要ないので、この春休みにプラネタリウムを見に出かけてみてはいかがだろうか。ただし、同施設にはレストランがないので、弁当の持参をオススメしたい。本館デッキなどには、弁当を食べるほか、休憩に使えるテーブル・椅子が用意されている。

●information
小川げんきプラザ
住所:埼玉県比企郡小川町木呂子561
プラネタリウム館:126席。一般:720円、高校生:360円、中学生以下:無料
宿泊施設:宿泊室、バンガロー、常設テントがある。5人以上での利用と、施設利用が前提(プラネタリウムの視聴でも可)

あのピリ辛グルメを食べに東松山へ

金勝山の頂上(264m)は、小川げんきプラザの場所ではなく東武東上線の東武竹沢駅に向かう山道の途中にある。金勝山は、裏金勝山、前金勝山、西金勝山などいくつかの峰々の集合だが、「金勝山」という看板が出ている場所が、最も標高が高いポイントらしい。金勝山頂上から東武竹沢駅までは、およそ30分。途中、沢コースと尾根コースに道が分かれるが、どちらを歩いても所要時間に大差はなさそうだ。

金勝山頂上を示す看板

さて、東武東上線に乗ったら、東武竹沢駅から5駅先の東松山駅に移動しよう。ここには、埼玉県の中央エリアに来たなら、ぜひとも食べたいグルメがあるのだ。そのグルメとは、東松山名物の、辛いみそだれをつけて食べる"やきとり"だ。面白いのは、東松山のやきとりは、鶏肉ではなく豚のカシラ肉を使う。

やきとりは店先で焼いてもらい持ち帰るのももちろん可能だが、店内で食べられる店もあり、定食も用意されている。一日歩いた疲れを癒やすため、ビールを飲みながらやきとりをつまむのなど、最高ではないか。

東松山名物のやきとりは辛みそたれでいただく。東松山駅前「ひびき」の「焼きとん定食(5本)」は、税別1,150円

今回歩いたコースは、山歩きだけなら、ゆっくり歩いても4~5時間ほどで踏破できる。日頃の運動不足解消やリフレッシュのために、無理なく歩けるちょうどいい距離だろう。また、ハイキングというと、遠出しなければならないイメージだが、外秩父は都心から1時間ちょっとの場所に位置し、山の標高も低いので、運動靴とリュックさえあれば特別な装備も必要なく、気軽に山歩きが楽しめるのが魅力だ。

筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト、オールアバウト公式国内旅行ガイド。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に取材・撮影を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。