ホテルと眠りは切っても切り離せない。どのような施設においてもホテルである以上、"快眠追求"は共通のテーマであるが、ホテル名そのものが睡眠イメージというブランドが話題だ。その名も「レム(remm)」で、3月30日には六本木に5店舗目がオープンした。名前の通り、全力で快眠に誘ってくれるホテルである。

さあ、眠ろう(Aube(オーブ: 暁)のイメージの客室)

「眠りをデザインする」

ネーミングは、"レム睡眠・ノンレム睡眠"の「レム」を語源としている。レムは、大阪に本社を置く阪急阪神ホテルズが展開する宿泊主体型ブランド。阪急阪神ホテルズは阪急阪神ホ-ルディングス傘下のホテル経営会社で、レムをはじめ、ラグジュアリーホテルやビジネスホテル、リゾートホテルなど全国で18の直営ホテル、28のチェーンホテルを展開している。

中でもレムは、「眠りをデザインする」をコンセプトに快眠を追求。既存4店舗(日比谷・秋葉原・鹿児島・新大阪)は共に好評を博している。宿泊主体型と言えば、ローコストタイプのイメージであるが、女性目線も意識したセンスとクオリティの高さは、ハイクラスタイプのホテルと言える。

ホテル活況の今、宿泊主体型のホテルでは拙速とも言える展開をみせるチェーンも散見する。一方、レムは立地から調度品に至るまで徹底してゲスト目線を追求。クオリティホテルのイメージを堅固な展開で広めつつある。3月30日に開業したレムブランド5店舗目となる「レム六本木」も、特筆すべきホテルだ。

「レム六本木」の外観

全室にレインシャワーやマッサージチェアも

まずは立地。六本木交差点から徒歩1分にして外苑東通りに面した堂々たる存在感。東京メトロ日比谷線、都営大江戸線六本木駅からも至近。六本木は、繁華街として一等地である上エリアは相当広く、六本木のホテルと言えば、徒歩5分~というケースは当たり前だ。こうした条件下でここまで駅至近、しかも宿泊主体型ホテルの誕生は驚きである。

既存店同様、客室全てに日本ベッド製造と共同開発したオリジナルベッド(シルキーレム)が採用されている。実際にマットレスに横たわると分かるのだが、場所によってコイルの反発が異なるのだ。身体の部位が計算されたマットレスと言える。その他、ユニットシャワーでは天井から優しく降り注ぐレインシャワーを採用。全室にマッサージチェアも設置されており、快眠環境が十分に整えられている。

全室にマッサージチェアも設置

5~20階客室各25室の客室構成は、シングルルーム320室・ツインルーム80室。首都圏のレム既存店と比べツインルーム数は多いが、六本木という立地からも訪日外国人の増加を見据えのバランスだという。印象的なカラースキームは、Soleil(ソレイユ: 落日)、Foret(フォレ: 森・緑)、Aube(オーブ: 暁)のイメージ。朝・昼・夜、タイムレスな六本木の街を表現しているという。

Soleil(ソレイユ: 落日)のイメージ

Foret(フォレ: 森・緑)のイメージ

旬野菜モリモリなメニューで身体が目覚める

2階のレストランも秀逸。宿泊主体型ホテルの供食・レストランと言えば、機能性が主張されるイメージが大半を占める。一方、レム六本木のレストランは、ハイセンスなクオリティダイニングの展開などで知られるポジティブドリームパーソンズの「CEDAR THE CHOP HOUSE & BAR」(セダー ザ チョップ ハウス アンド バー)。洗練されたスペースの中で、ライブ感があふれるオープンキッチンは魅力的だ。

オープンキッチンも備えたレストラン

朝食メニューで注目は「旬野菜のサラダバー」。新鮮野菜をチョップドサラダ、バーニャカウダ、リーフサラダといったスタイルで、オリーブオイルやヒマラヤ岩塩、自家製のドレッシングと共に楽しめる。レムのブランドエッセンス"Smart Cube"は、客室にはもちろんレストランにも訴求されている。

「旬野菜のサラダバー」のほか、身体においしいメニューがそろう

眠らない街・六本木でぐっすり眠れるホテル。東京ホテルライフに加えたい、スタイリッシュな快眠ホテルである。

筆者プロフィール: 瀧澤 信秋(たきざわ のぶあき)

ホテル評論家、旅行作家。オールアバウト公式ホテルガイド、ホテル情報専門メディアホテラーズ編集長、日本旅行作家協会正会員。ホテル評論家として宿泊者・利用者の立場から徹底した現場取材によりホテルや旅館を評論し、ホテルや旅に関するエッセイなども多数発表。テレビやラジオへの出演や雑誌などへの寄稿・連載など多数手がけている。2014年は365日365泊、全て異なるホテルを利用するという企画も実践。著書に『365日365ホテル 上』(マガジンハウス)、『ホテルに騙されるな! プロが教える絶対失敗しない選び方』(光文社新書)などがある。

「ホテル評論家 瀧澤信秋 オフィシャルサイト」