カフェインに含まれる酵素「NMNAT2」の働きとは

モーニングコーヒーは、眠い目をクリアにしてくれるという点でビジネスパーソンの強い味方だ。人によっては朝だけではなく、ランチ後のコーヒーブレイクや残業時など、一日に何杯もコーヒーを飲むだろう。そんな人たちは、カフェインによる思わぬ"副産物"を得られているかもしれない。

海外のさまざまなニュースを紹介する「MailOnline」にこのほど、「コーヒーと認知症」にまつわるコラムが掲載された。カフェインは認知症から脳を守る酵素の力を高める可能性を秘めていることが最近明らかになったという。科学者たちはカフェインがニューロンを保護し、病気を引き起こす「ミスフォールドたんぱく質」と闘う酵素を活性化するとみている。

現在、世界には4,750万人の認知症患者が存在し、2050年までには1億1,540万人にまで増えると予測されている。研究者たちは、大多数の成人が消費しているカフェインによって、変性疾患の進行が遅くなることを願っている。

これまでの研究で、「NMNAT2」と呼ばれる酵素が脳内で2つの重要な役割を果たすことが判明している。一つはストレスから神経細胞を防御する機能であり、もう一つは、「タウ」と呼ばれるミスフォールドたんぱく質と闘う「シャペロン機能」だという。このタウは加齢に伴い、認知症の原因とみられている「プラーク」として蓄積されていく。

ミスフォールドたんぱく質はアルツハイマー病やパーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALSまたはルー・ゲーリック病)のような疾病と関連がある。その中でもアルツハイマー病の症例が最も多く、米国でも540万を超える人が罹患しており、高齢化とともにその数は増えることが予測されている。

今回、インディアナ大学ブルーミントン校の研究者グループは、現在ある薬剤を含め1,280の化合物を選び出し、マウスによる試験を実施した。その結果、24の化合物、特にカフェインが脳内におけるNMNAT2の産生増加に貢献することを見出したとのこと。

NMNAT2を低レベルでしか産生しないように改良されたマウスに、研究者がカフェインを投与したところ、そのマウスは通常のマウスと同レベルのNMNAT2を産生するようになったという。

他にも、「うつ病や多発性硬化症のリスクを低減する」「脂肪燃焼を助ける」「繊維の摂取量を増加させる」などのカフェイン摂取によるメリットがある。ぜひとも毎日のコーヒー摂取を励行したいところだが、その際は砂糖やポーションミルクの使いすぎに注意しよう。

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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。