中国で動き出す「NEV規制」

マツダの電動車両の開発は、やや遅ればせながらという状況もなきにしもあらずだが着実に進められ、あと1年ほどすれば、その全容が明らかになってくるのではないかと期待が高まる。

そんな中、電動車両への欲求は、米国だけでなく中国でも起こりはじめている。カリフォルニア州のZEV規制とほぼ内容を同じにする「New Energy Vehicle(NEV)規制」が、中国でも動き出そうとしているのである。

中国では2016年に40万台のEVが販売された。例えば日産・ルノーアライアンスが、2010年の「リーフ」発売から積み上げてきた累計35万台(2016年9月時点)という実績を、軽く超える台数をたった1年で達成したのである。

藤原氏も、「マツダはもちろん、世界の自動車メーカーが主力と考える市場は、米国と中国です」と述べる。自動車市場の1位中国と2位米国であり、EVは巨大自動車市場に不可欠な商品となっていく運命にある。

世界中の自動車メーカーが重要市場に位置づける中国。マツダは「CX-4」で「2017中国カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞している

小規模メーカーこそ電動化が急務

なぜ、中国がそこまでEVに熱心になるのか。それは、以前のカリフォルニア州と同じように、北京をはじめ中国国内で発展する都市の多くが、大気汚染による健康被害に悩まされているからである。

大気汚染の原因は、必ずしもクルマの排ガスだけではない。国民生活を支える電力の発電に、石炭火力が使われていることも大きい。経済をさらに発展させ、国を繁栄させ、国民生活の文明化を国全体に拡大するには、石炭火力からの脱却が不可欠なのである。そこで注目されているのが原子力発電だ。400基という膨大な原子力発電所の建設計画とEVの導入は、中国が発展を成し遂げるうえで中核事業に据えるものだ。

また米国も、1979年に起きたスリーマイル島の事故以来中断してきた原子力発電所の建設に動き出している。それが、いま問題となっている東芝のウェスティングハウス買収と、それによる不採算にも関わっている。

これまで京都議定書に調印してこなかった世界最大のCO2排出国である中国と、2位の米国。両国がパリ協定に調印できたのも、そうした原子力発電事業の見通しがあるからだ。

いま、世界のほとんどのクルマはエンジンで走っている。だが、米国と中国でEVが普及し始めたら、他の市場でもEV化を進めなければ、自動車メーカーはエンジンとモーターという2つの生産体制を持ち続けなければならなくなる。それは、小規模な自動車メーカーにこそ難しい話であろう。EVへの転換をいかにうまく進めるか。マツダを含め、世界の自動車メーカーの正念場は目前に迫っている。