規制対策ではなく、大義のための電動化

マツダの具体的な取り組みについて藤原氏は、「マツダは、そうした規制のためにEVなどの開発をしているわけではありません」と切り出した。「サステイナブル“Zoom-Zoom”宣言のときから、企業がなすべきは、地球温暖化(気候変動)をいかに抑制するかです。それが、大義です」と言うのである。

続けて、「まず世界にもっとも台数の多い内燃機関(エンジン)から解決していくのが、マツダの優先順位です。その燃料として石油を精製すれば、ガソリンだけでなく軽油も生まれます。軽油を、日本ではあまり使われないからと海外へ出せば、そこでCO2排出量を余計に増やすことになります。ですから、国内でもそれをきちんと消費できるように、ディーゼルエンジンの市場も育てていかなければならないと考えました」と藤原氏は語った。

それが、マツダのクリーンディーゼルエンジン車である。実際、マツダは日本市場においても、「デミオ」から2017年2月に発売した「CX-5」まで、5車種にわたってクリーンディーゼルエンジンを設定している。

「地域によってエネルギー事情が違い、たとえば北欧のノルウェーでは電力の100%を水力で賄っています。そうした地域では、効率の良い内燃機関よりEVの方がCO2排出量は少なくなります。その地域の市場からは、早くEVを出してほしいと催促されています。また、北欧諸国ではZEVに対する関税がゼロになる政策もとられています。カリフォルニア州であるとか、原子力発電のある国や地域では、EVの方が地球温暖化の抑制になります。そういう地域のために電動化をしていくというのが、次の順序です」というのが藤原氏の考えだ。

エコカー時代に脚光を浴びる「ロータリーエンジン」

2019年にEVを発売後、2021年以降にはPHVも追加していくことになるという。EVについては、車載バッテリーのみで走る仕様に加え、エンジンで発電し、それを駆動に使うレンジエクステンダーの車種も考えているそうだ。「BMWのi3と同じやり方です」と藤原氏。このレンジエクステンダー用の発電エンジンとして、世界で唯一、マツダが量産市販してきたロータリーエンジンを活用したいと話す。

BMW「i3」はEVだが2輪車用のエンジンも搭載しており、そこで発電した電力を走行に使うことで航続距離を伸ばす。これがレンジエクステンダーの仕組みだ

ロータリーエンジンによるレンジエクステンダーは、2013年の暮れに試作車によって公開された。それに私は試乗したが、騒音・振動が他のレンジエクステンダーエンジンに比べ明らかに小さく、後席に座ると多少エンジン音が耳に届く程度という完成度の高さだった。

藤原氏は、「マツダはロータリーエンジンを量産してきましたから、そのあたりの出来は他と違います」と胸を張る。そして、数多くの知見を持つ世界で唯一の企業であるマツダとして、ロータリーエンジンをいかしていけないかと期待を寄せる。

そこには、別の思いもあるという。